フランスの小さな美しい村に惹かれる理由がはっきりした・・・【情熱的読書人間のないしょ話(384)】
午前は水辺生物観察会、午後は撮影勉強会に参加しました。千葉・流山の一茶双樹記念館の新緑と石庭に癒やされました。古い呉服屋の黒塀、醤油や味醂を入れるのに使われた甕、ポンプ式井戸などが、この地区の歴史を感じさせます。あかり館で求めた和紙で作られた小さな灯籠の灯が揺らめいています。オープン・ガーデンではいろいろな工夫が凝らされていて勉強になりました。ルナリア(ゴウダソウ、ギンセンソウ)、ジギタリス、スモークツリー、レモンなどを観察することができました。レモンの花は柑橘類特有の芳香がします。因みに、本日の歩数は21,064でした。
閑話休題、『フランスの美しい村を歩く』(寺岡直子著、東海教育研究所)は、著者がフランスの小さな美しい村々を訪ね歩いた探訪記です。美しいカラー写真と、村の成り立ちや土地のグルメ、ワイン、一期一会の絶景、村人との語らいなどを綴る洗練された文章が絶妙なハーモニーを醸し出しています。
「道路は未舗装の砂利道、宿泊施設も簡素な民宿のみという村が多く、もちろんコンビニエンスストアなどはありません。古城や教会・聖堂、数世紀にわたる木造建築の住居など中世の面影を残し、時が止まったような錯覚を起こすほど。観光客向けの整った施設になじんだ私たちには、あるがままの村の風景は新鮮な驚きであり、今までになかった観光の在り方に気づかせてくれます。何も加えず、何も壊さず、昔から受け継いできたものが美しい。見せかけではない長い時間をかけて、育まれてきた村の存在こそがかけがえのない財産なのだと教えてくれます」。
「シャトーヌフ――偶然の旅人を導く美しい時間と出会い」は、住民が100人に満たない小さな村です。「小さな古城を中心に村が形成された姿は、まさに中世そのもので、とてもよく保存されています」。
「ガッサン――コート・ダジュールの光に満ちあふれた村へ」の曲がりくねった細い石畳の坂道を、自分自身の足で歩いてみたくなってしまいました。「ガッサンは、山というよりは丘陵と呼べるような高台に位置し、愛らしいレストランやカフェがある広場からは、眼下にサントロペを含めた美しい流線型の海岸線を眺めることができます」。
「ペルージュ――村をバラ色に染めるマジックモーメント」の坂道は、夜に歩いてみたい道です。「ゆるやかな丘陵に沿うように広がる村へは、まず、ゆっくりと石畳の坂道を上ります。道の両側には村を守るため、要塞のように高くそびえる家々。これもまた重厚な石造りでできています。まさに村は中世そのもの。見事です」。「再び石畳の路地を歩き、夜のペルージュを探訪します。足元を見ると、ところどころ石畳の道に電球が埋め込まれているのに気づきました。ぽつりぽつりと行き先を照らすようにきらめく明かりが、中世の村を奥ゆかしくライトアップ。これも夜に来ないとわからないことでした。ふと、空を見上げると淡く輝く月。すべてが完璧に美しい奇跡の瞬間でした」。
「トゥレット・シュル・ルー――愛くるしいスミレの村を訪ねて」は、このように紹介されています。「石造りの時計台の門を抜けて旧市街の路地へと入ると、そこには時間が止まったような中世の面影が。ざっくりと積み上げられた石の家々、踏みしめられた石畳の通路が迷路のように奥へと誘います。こつこつと石畳に響く自分の靴音を聞きながら、ゆっくりと時をさかのぼるように村をさまよう」。迷路には、なぜか心惹かれます。
小さいけれど宝石のようなきらめきを放つ美しい村を訪れてみたくなってしまいました。これまでヨーロッパ旅行中に立ち寄って心に刻まれている土地も、本書を読んで行きたくなった村も、中世の雰囲気が色濃く残っている場所であることに気づかされた私です。