茶の湯を愛した女性たちのエピソード集・・・【情熱的読書人間のないしょ話(413)】
散策中に、寄り添う2羽のキジバトに出会いました。キジバトはカップルで行動を共にすることが多く、その仲のよさは群を抜いています。ザクロの橙色の花が咲き始めています。ヒマワリも黄色い花を咲かせ始めています。ストケシア(ルリギク)の白色と薄紫色の花は涼しげです。ユリの鮮やかな黄色い花が目を引きます。因みに、本日の歩数は10,270でした。
閑話休題、『女性と茶の湯のものがたり』(依田徹著、淡交社)には、茶の湯を愛した女性たちが登場します。
とりわけ印象に残ったのは、千利休の後妻の宗恩と、千家の三代・宗旦の後妻の宗見です。
「武野紹鴎が夜会で鶴首花入に水仙を活けた時、灯火の写し出す影が『鶴の雲井に声をあげる姿』に見えたという。その話が広まったため、『夜の花は紹鴎に及ばない』といって、皆夜会には活けることを避けるようになった。ところが宗恩が『夜の花は影が特に面白いですね』と言うので、利休が白い花を活けるようになったのである(『閑夜茶話』)。これも宗恩の美意識が、その後の茶に大きな影響を与えた例である」。
「『千利休由緒書』は利休切腹の際、宗恩が白小袖を持ちだして、夫の死骸へかけたことを伝えている。この気丈な行為には、権力者による不条理に対する、無言の抗議を読み取ることができる」。
「侘び茶を突き詰めていった夫の宗旦は、懐石に菓子を付けないのを常としていた。質素を旨とする宗旦は、このような茶事ばかりを行っていたようである。ところがある茶事の折、千家に見事な鱸(すずき)が到来した。宗旦はせっかくの馳走を客に出さない手はないと、これを刺身にして客人に出そうとする。ところが厨房の宗見が、この鱸の調理を拒否した。鱸を出すほどの懐石では、菓子が出ないとおかしいというのである。宗旦は、ならば菓子を出せばよいというが、ふたたび宗見が意見する。そのような豪華な茶事をしてしまうと、侘び茶人として知られた宗旦の茶を、かえって貶めるというのである。この妻の主張に反論できず、宗旦は黙って茶事をはじめている。表に出ない宗見の方が、侘び茶人・宗旦の面目を、宗旦以上に理解していたのである」。
この2つのエピソードには、理想的な夫婦のあり方のヒントが潜んでいます。夫の生き方や仕事の流儀を深く理解している妻が夫にアドヴァイスする、それを夫が受け容れるという関係が素晴らしいですね。また、夫を死に至らしめた秀吉に対する宗恩の抗議は、静御前が愛する義経を死に追いやった頼朝の前で抗議の舞を舞ったことを想起させます。夫を思う妻の心情が伝わってきます。