榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

出雲の阿国の「ややこおどり」に酷似した踊りが今に伝わっている村・・・【情熱的読書人間のないしょ話(497)】

【amazon 『忘れられた日本の村』 カスタマーレビュー 2016年8月23日】 情熱的読書人間のないしょ話(497)

我が家のキンモクセイで盛んに鳴いているツクツクボウシの写真が撮れました。観察を続けると、鳴き始める時に尻を高く持ち上げ、腹部全体を震わせながら鳴くことが分かりました。翅が透き通っているので、よく見えるのです。なかなか止まらないので撮影が難しいアゲハチョウ(ナミアゲハ)を遂にカメラに収めることができました。因みに、本日の歩数は10,411でした。

IMG_1624

IMG_1656

IMG_1524

IMG_1520

IMG_1521

閑話休題、『忘れられた日本の村』(筒井功著、河出書房新社)では、著者が訪ね歩いた、日本各地の7つの「忘れられた村」が紹介されています。

「雪深い北陸『綾子舞い』の里」の章は、歌舞伎の創始者とされる出雲の阿国(おくに)との関係を明らかにしようという意欲的な試みです。

「現今の歌舞伎は400年余り前、『出雲の阿国』の名で知られていた女性らが始めた歌舞伎踊りに起源をもつとされている。阿国が実在の人物であったこと、慶長8(1603)年、京都で従来とは異質の新しい形式の踊りを演じ、それを歌舞伎踊りと称していたことについては、十分に信頼できる文献史料が残っているので確かな史実だといえる」。

「阿国は歌舞伎踊りの前には、『ややこおどり』を踊っていたことが確実である。『時慶卿記』慶長5(1600)年7月1日条に、京都・近衛邸で『クニ』『菊』という2人の女性が『ヤヽコ跳(おどり)』を演じた旨が見え、これが阿国の史料上の初見だが、その芸能は別の信頼できる文献には『かぶきおどり』と記されているからである。・・・歌舞伎踊りは『ややこおどり』を発展させた芸能であり、だから現行の歌舞伎は『ややこおどり』に始まるということもできるかもしれない。その『ややこおどり』そっくりの踊りが新潟県柏崎市女谷(おなだに)に残り、いまも演じつづけられている。・・・女谷では現在、この芸能を『綾子舞い』と呼んでいる。もとは『綾子踊り』といっていたが、大正時代の初め『舞い』に変えたのである」。

「『ややこおどり』と綾子舞いとの尋常とは思えない類似から考えて、前者の芸能に習熟していた集団が鵜川の地を踏んだことははっきりしている。・・・芸能者たちは村に住みつき、村の人間になったに違いない」。

「柏崎市の鵜川地区に移植された綾子舞いが、出雲の阿国らの芸能と深くかかわっていたことを否定する研究者は、ほとんどいないようである。・・・アヤコは阿国が少女時代に踊っていた『ややこおどり』のヤヤコが、そう訛ったとするのが定説になっている」。

「大分県『青の洞門』の虚と実」の章では、麹池寛の『恩讐の彼方に』の主人公・了海(史実では「禅海」)の虚実について興味深い見解が展開されています。