戦争と浮世絵は、本当に馴染むのだろうか・・・【情熱的読書人間のないしょ話(562)】
散策中に、オオチャバネセセリとイチモンジセセリを見つけました。いろいろな色合いのコスモスが風に揺れています。因みに、本日の歩数は10,349でした。
閑話休題、戦争と浮世絵という珍しいテーマを扱っている『戦争と浮世絵』(太田記念美術館監修、日野原健司著、洋泉社)を手にしました。
幕末の動乱、西南戦争、日清戦争、日露戦争の戦争画が多数収録されています。浮世絵で描かれた戦争は、当然のことながら、西洋画や写真とは異なる雰囲気を漂わせています。
例えば、安達吟光の「鹿児嶋新聞 熊本城戦争図」(明治10<1877>年3月)は、西南戦争における熊本城を巡る攻防がテーマとなっています。右下に西郷隆盛、中央には馬上で指揮を執る桐野利秋が、臨場感豊かに描かれています。「薩摩軍が熊本城に向かって一斉に銃撃を繰り広げており、左下には銃身の掃除をする兵士たちの姿も描かれている。一面に広がる煙に隠れているが、熊本城の石垣の上には政府軍が立ち並び、こちらも銃撃で激しく応戦している」。実際は、西郷は本営の川尻におり、この図のように熊本城の真下では指揮を執りませんでした。
小林永濯の「鹿児島新報 田原坂激戦之図」(明治10年3月)は、西南戦争のクライマックスともいうべき、17日間に亘り激戦が繰り広げられた田原坂の戦いがテーマです。「画面手前は桐野利秋が指揮を執る薩摩軍。田原坂を駈け下りて政府軍に立ち向かっていく様子が描かれている。画面左奥で政府軍を指揮するのは谷干城。実際には谷は熊本城に籠城していたため永濯は事実を誤認していたのだろう」。戦いの激しさが生々しく伝わってきます。
日清清掃を最も多く描いた浮世絵師は小林清親です。戦争画ではありませんが、彼の「日本橋夜」は、日本橋上を行き来する人々、人力車、馬車が影絵のように描かれていて、光と影が交錯する情感豊かな作品に仕上がっています。