「ナチスの恋人・愛人」だと、見せしめで丸刈りにされた女性たち・・・【情熱的読書人間のないしょ話(571)】
散策中に、ホトトギスが野鳥のホトトギスのような花を咲かせているのを見つけました。ノハラアザミが明るい薄紫色の花を付けています。イヌサフランが薄紫色の花びらを広げています。オキザリス・トライアングラリス(ムラサキノマイ)の三角形の濃紫色の葉とほんのりと紫色の小さな花のコントラストが目を引きます。同じ三角形の葉ですが、緑色のオキザリス・トライアングラリス・ファニーも見つけました。因みに、本日の歩数は11,891でした。
閑話休題、『丸刈りにされた女たち――「ドイツ兵の恋人」の戦後を辿る旅』(藤森晶子著、岩波現代全書)を読んで、3つのことを考えさせられました。
第1は、第二次世界大戦下、ドイツに占領されたフランスで、解放後に見せしめとして、ドイツ兵と性的関係のあったフランス人女性が丸刈りにされる事例が多発しましたが、好きになった男性がたまたまドイツ人男性だったというケースも含まれていたこと。
第2は、丸刈りにされた女性の中には、性的関係のなかった者も多数含まれていたこと。「戦後、女性たちが丸刈りにされたのはドイツ人と性的関係を持ったためであったとされてきた。日常的に恐怖に晒されながら生活せねばならなかった人々を尻目に、ドイツ人将校と親しくなることで後ろ盾を得て、物質的豊かさを享受した女性たちだとされてきた。あるいは、若さゆえにドイツ人兵士と純粋に恋に落ちた女性たちとも考えられてきた」。「フランスの歴史家ファブリス・ヴィルジリによると、2万人いるとされる丸刈りの被害者のうち、実際にドイツ人兵士と性的関係を持っていた女性は半分にも満たない。残りの半分の女性たちは、経済的協力者、密告者、対独協力的組織に加入するなどしていた政治的協力者、枢軸国出身者であった」。
第3は、丸刈りにされた女性たちに同情的な著者が、59年後にその被害に遭った8名を尋ね当て、話を聴いた記録が本書ですが、当然のことながら、それぞれに事情を抱えていたこと。そして、戦後、「ナチス協力者」の烙印を押された彼女たちが困難に満ちた人生を送ったこと。
私が丸刈りにされた女性の存在を知ったのは、戦場写真家、ロバート・キャパが撮影し、「ライフ」に掲載されたシャルトルの女性の写真によってでした。道路に充満した大衆の野次を浴びながら、乳飲み子を守るように抱きかかえた丸刈りの女性が追い立てられています。
この他、本書には、●監獄に囚われた丸刈りの女性たち、●フランス北西部のジソールで丸刈りにされた女性、●トラックの荷台に立たされた10人以上の丸刈りのシェルブールの女性たち、●びっしりと人々で埋め尽くされたメッスのサン・ジャック広場の高台の上で丸刈りにされる下着姿の女性、●丸刈りにされた額に鉤十字を描かれたパリの女性――などの写真も収録されています。