榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

『半沢直樹』でお馴染みの金融庁の資産査定を止めさせた男の地銀改革・・・【情熱的読書人間のないしょ話(605)】

【amazon 『捨てられる銀行』 カスタマーレビュー 2016年12月3日】 情熱的読書人間のないしょ話(605)

昨夕は、三日月と宵の明星(金星)の競演でした。今朝は、美しい朝焼けを見ることができました。読み聞かせヴォランティアで、「ちいさなねずみのクリスマス」と「ぼくは ぞうだ」を読みました。カキの実にムクドリが群がっています。我が家の庭の餌台にスズメがやって来ました。因みに、本日の歩数は11,751でした。

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閑話休題、『捨てられる銀行』(橋本卓典著、講談社現代新書)は、2015年7月に金融庁の長官に就任した森信親に対する期待感から書かれたと言っていいでしょう。裏を返せば、今後、森の金融改革が功を奏せば、本書は喝采を浴びるでしょうが、改革が失敗に帰せば、誰も本書を手にしなくなることを意味しています。

森が金融改革に対する揺るぎない信念と果断な実行力を持つ人物であることは、資産査定の中止を打ち出した一件を見ても分かります。「森は2013年9月、1年間の行政方針『金融モニタリング基本方針』で、銀行界から最も恐れられ続け、金融庁検査で必ず行われてきた個別の資産査定を原則中止とする大決断を打ち出した。これは、メガバンクから地域金融機関、さらには金融庁内部に至るまで、かつてない衝撃をもって受け止められた。例えば、テレビで人気を博したドラマ『半沢直樹』では、陰湿な金融庁検査官が登場し、資産査定で銀行を追い詰めて話題になった。実際の現場でもこれに近い、或いはこれ以上の辛辣な検査が繰り広げられてきたが、森金融庁は、この検査スタイルを捨てたのだ」。

現在の地方銀行(地銀)は、どういう状況に置かれているのでしょうか。「(日銀のマイナス金利導入下で)各地銀とも単に低金利に低金利で対抗するだけの果てしない貸出競争を続けたとしても、人口減少が著しい地方では生き残れない。地元の営業エリアに責任を持ち、取引先の事業者の成長や再生に手を尽くさなければ、自らの銀行のみならず日本そのものが危うくなるのは誰もが分かりきっている事実だ」。

「顧客本位の営業とは無縁の飽くなき貸出規模の拡大と低金利での貸出競争に明け暮れ、地元企業の苦境や人口減の末路に目を向けていないとしたら、地銀は一体何のために存在するのか」。一刻の猶予も許されないという切羽詰まった危機感が、森の背中を強く押しているのでしょう。

森が常々強調する持論があります。「多くの地域金融機関は、地域の経済の発展なくしては、発展も持続可能性もない。地域の企業、産業をよくすることで金融機関自らが良くなるという両立が重要だ。健全性は、この時点の話ではなく、将来に向けての健全性のはずだ」。

森が長官就任直後に公表した「金融行政方針」の中で、「具体的重点施策」として、「企業の価値向上、経済の持続的成長と地方創生に貢献する金融業の実現」が強調されています。「我こそは目端が利くと自負するMOF(財務省)担ですら、金融庁が発表した新たな行政方針に度肝を抜かれた。これまでは『銀行の持続可能性』や『銀行の健全性』と、常に金融機関を磨くことだけを、金融庁は問うてきたが、今回の行政方針は大きく踏み込み『銀行の先にいる地域の企業や経済の成長こそが最も大事だ』と宣言したに他ならないからだ。金融機関の健全性だけを気にしていた各地銀は今、金融庁の次の出方に神経をとがらせている」。

地銀が地域の企業の成長に貢献する体質に転換できるか、私たちも注視していく必要がありますね。