榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

黒柳徹子の子供時代の経験を通じて、教育、教師のあり方を考える・・・【情熱的読書人間のないしょ話(636)】

【amazon 『窓ぎわのトットちゃん』 カスタマーレビュー 2017年1月4日】 情熱的読書人間のないしょ話(636)

すっかり葉を落とした木々に心惹かれます。クロガネモチが赤い実をたくさん付けています。キンカン、ナツミカンが鈴生りです。散策の途中、日が射し込むコメダ珈琲店で一休みしました。因みに、本日の歩数は10,349でした。

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閑話休題、書斎の一角に「いつか読むぞコーナー」があります。読みたいと思って求めたものの、未だ読めていない本の待機場所ですが、2015年末に数えた時は102冊が並んでいました。2016年末に調べたら57冊に減っていました。年頭に当たり、2017年末にはこれをゼロにしたいと考えています。

このコーナーの一冊、『窓ぎわのトットちゃん』(黒柳徹子著、講談社)を読み終わりました。黒柳徹子の子供時代の自叙伝ですが、教育について、教師について、そして、子供の気持ちについて考えさせられました。

小学校1年生で退学になったトット(徹子)ちゃんは、子供の個性を大切にするユニークな教育を行っているトモエ学園に転校します。「トットちゃんには、本当に、新しい驚きで、いっぱいの、トモエ学園での毎日が過ぎていった。あいかわらず、学校に早く行きたくて、朝が待ちきれなかった。そして、帰って来ると、犬のロッキーと、ママとパパに、『今日、学校で、どんなことをして、どのくらい面白かった』とか、『もう、びっくりしちゃった』とか、しまいには、ママが、『話は、ちょっとお休みして、おやつにしたら?』というまで、話をやめなかった」。

トットちゃんが学校のトイレに財布を落とした事件の後のことです。「それから(小林宗作)校長先生を『心から信頼できる人』と思ったし、『前よりももっと先生を好き』になったのだった」。

「(トモエ学園の生徒たちは)自分より小さい人や弱い人を押しのけることや、乱暴をするのは、恥ずかしいことだ、ということや、散らかっているところを見たら、自分で勝手に掃除をする、とか、人の迷惑になることは、なるべくしないように、というようなことが、毎日の生活の中で、いつの間にか、体の中に入っていた。それにしても、たった数ヵ月前、授業中に窓からチンドン屋さんと話して、みんなに迷惑をかけていたトットちゃんが、トモエに来たその日から、ちゃんと、自分の机にすわって勉強するようになったことも、考えてみれば不思議なことだった。ともかく、今、トットちゃんは、前の学校の先生が見たら、『人違いですわ』というくらい、ちゃんと、みんなと一緒に腰かけて、旅行をしていた」。

「校長先生は、トットちゃんを見かけると、いつも、いった。『君は、本当は、いい子なんだよ!』。そのたびにトットちゃんは、ニッコリして、とびはねながら答えた。『そうです、私は、いい子です!』。そして、自分でもいい子だと思っていた。・・・トットちゃんの一生を決定したのかも知れないくらい、大切な、この言葉を、トットちゃんが、トモエにいる間じゅう、小林先生は、いい続けてくれたのだった。『トットちゃん、君は、本当は、いい子なんだよ』って」。この箇所を読んでいて、私の高校1年の時の担任の唐木宏先生を思い出してしまいました。成績が酷く低迷していた時、先生から咎められることを覚悟していたのに、「君は、実にいい素質に恵まれている。好漢、奮起せよ!」と言われたのです。この時以来、気持ちが落ち込むたびに、先生の「好漢、奮起せよ!」という声に励まされて立ち上がってきたのです。

よその学校の男の子たちが「トモエ学園、ボロ学校! 入ってみても、ボロ学校!」とはやし立てるのに対抗して、トットちゃんが「トモエ学園、いい学校! 入ってみても、いい学校!」と言い返すと、トモエ学園の生徒たちが声を揃えて唱和し出したのです。「『トモエ学園、いい学校! 入ってみても、いい学校!』。校長室の校長先生が、どんなに、うれしい思いで、この歌を、耳を澄ませて聞いていたか、生徒は、もちろん、知らなかった」。このエピソードには、目頭が熱くなってしまいました。

小林先生の教育方針については、著者がこのように述べています。「どんな子も、生まれたときには、いい性質を持っている。それが大きくなる間に、いろいろな、まわりの環境とか、大人たちの影響で、スポイルされてしまう。だから、早く、この『いい性質』を見つけて、それをのばしていき、個性のある人間にしていこう」。