榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

いい意味で予想を裏切られました・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2390)】

【読書クラブ 本好きですか? 2021年11月2日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2390)

ナンキンハゼ(写真1)、マムシグサ(写真2、3)が実を付けています。変わった雰囲気のキノコ(写真4)を見つけました。小さなホウキギ(ホウキグサ、コキア。写真5)も頑張っています。

閑話休題、『あの人が好きって言うから・・・有名人の愛読書50冊読んでみた』(ブルボン小林著、中央公論新社)を読んで、いい意味で予想を裏切られました。読書家と持て囃されていても、いわゆる有名人の書評にはがっかりさせられることが多いからです。

例えば、「長澤まさみの愛読書――『わたしが・棄てた・女』(遠藤周作)」は、このように書かれています。「長澤まさみは愛読書が多い。・・・しかも、しっかりと読んでいる。たとえばドラえもんのひみつ道具の事典なんて、ただ挙げてたら、本をあまり読んでいないという証拠のような一冊だが、彼女の感想は『タケコプターに憧れました』とかではない。『夢にあふれた世界なのに道具の説明はすごく現実的』と、ちゃんと『評』をしている。本谷有希子の小説は、彼女が演出する舞台に出る際に『全部』読んだという。読むことの負担が少ないのらしい。また『この本を好き』と言うとこう思われる、という自意識もない。そのことの全体に強いエネルギーを感じ取る」。絶讃と言っていい高評価だが、長澤まさみの確かな演技力は読書に支えられているのかもしれません。

「ビートたけしの愛読書――『次郎物語』(下村湖人)」は、こう結ばれています。「病に倒れた母に対しての次郎の気持ちが変化し、乳母も含めて二重に聖性を感じていくのも、たけし本人がマザコンと公言していることと響きあう。読書をただのファッションでなく、自らの血肉として吸収した、真に『愛読書』と呼べる一作だ」。ビートたけしを見直してしまいました。

一方、手厳しい言葉も散見されます。

「安倍晋三の愛読書――『海賊とよばれた男』(百田尚樹)」の最後は、こうです。「痛快で気持ちいいものだけでなく、一国のリーダーはもっともっと本というものを広く深く愛読してほしい」。至言です。

「滝川クリステルの愛読書――『星の王子さま』(サン・テグジュペリ)」は、皮肉が利いています。「キャスター時代に云々されたのが報道姿勢じゃなく『映る角度』だったり、五輪招致のスピーチもオモテナシだけ有名になったり、結婚会見の場所も謎で、前から実態を掴みにくい人ではあったが、分かりやすいベストセラーを挙げてなお、浅い人か深い人かが分からない。作中の重要な台詞『大切なものは目ではみえない』が彼女にもあてはまるのか。大切なものが『ない』んじゃないかと思わせる空虚で不思議な気配も、彼女にはある」。まさに、言い得て妙です。

ブルボン小林というコラムニストは本書で初めて知ったが、その読書力、批評力は間違いなく本物です。