榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

一人キャンプを実際に経験した気分になれる本・・・【情熱的読書人間のないしょ話(722)】

【amazon 『一人を楽しむソロキャンプのすすめ』 カスタマーレビュー 2017年4月9日】 情熱的読書人間のないしょ話(722)

『失われた時を求めて』は、私の一番好きな長篇小説ですが、マルセル・プルーストがこの作品を書き始めたのは37歳の時でした。それより8年前、29歳の彼がちょっと気取って写真に収まっています。

閑話休題、一人キャンプに憧れを抱いていても、実際に実行するには至らない優柔不断な私にとって、『一人を楽しむソロキャンプのすすめ――もう一歩先の旅に出かけよう』(堀田貴之著、技術評論社)は、一人キャンプを実際に経験した気分になれる本です。

本書には、バックパッキング(徒歩旅行)の喜び、「衣」と「移」の道具とノウハウ、「住」の道具とノウハウ、「食」と「遊」の道具とノウハウ、自分らしい旅のアイディア――がぎっしり詰まっています。

「大きなバックパックを選ぶときは、時間をかけよう。家を探すぐらいの慎重さが欲しい。なんたって、家だけじゃなく旅の全財産を収納するものなのだから」。バックパックは、実際に背負ってみてフィット感を確認するようアドヴァイスしています。

靴は、ローカットのトレッキングシューズではなく、ハイカットのブーツにすべきと強調しています。ローカットの靴は、ハイカットに比べ、圧倒的に捻挫し易いというのです。荷物が重たいとなおさらだそうです。「ブーツは、どんどん増えていく、しかし、長く使うものは限られてくる。山では、ソールが剥がれたブーツに応急処置をして歩いている人をときどき見かける。経年変化や加水分解によって、底がはがれてしまうのだ。ということもあり、結局のところ、ソールの張替えができるトラディショナルなタイプに落ち着く」。

ことほどさように、自身の長年に亘る経験を踏まえて、微に入り細を穿ったアドヴァイスとアイディアが満載なので、これから一人キャンプに挑戦しようという人には、心強い味方となることでしょう。一方、私のように、想像の世界で一人キャンプに出かけたいという人間も十分に楽しめる本ですよ。