ベストセラー41冊を滅多切りの書評集・・・【情熱的読書人間のないしょ話(885)】
カキ、ザクロが色づいてきています。ケイトウがさまざまな色の花を咲かせています。ハゲイトウ、フヨウも頑張っています。因みに、本日の歩数は10,986でした。
閑話休題、米原万里が書評集『打ちのめされるようなすごい本』(米原万里著、文春文庫)の中で絶賛している『趣味は読書。』(斎藤美奈子著、ちくま文庫。出版元品切れだが、amazonなどで入手可能)を手にしました。
1999年から2002年までのベストセラー41冊が俎上に載せられていますが、これらのベストセラーを私がほとんど読んでいないことに驚かされました。私のベストセラー嫌いが影響しているのでしょう。
その数少ない既読書のうちの一冊、『朗読者』(ベルンハルト・シュリンク著、松永美穂訳、新潮文庫)に対する斎藤の辛辣な批評に、またまた驚かされました。驚きの連続攻撃です。
これは「包茎文学」だと、ばっさり切り捨てているではありませんか。
「少年ミヒャエル(主人公の『ぼく』、15歳)、性にめざめる」、「青年ミヒャエル、衝撃の事実を知る」、「中年ミヒャエル、再び朗読者になる」と、物語の概略を紹介した後で、「おわかりでしょうか。『朗読者』って、ものすごく『インテリの男に都合がいい小説』なのですよ。都合いいでしょう、どう見ても。少年・青年・中年期を通して『ぼく』は終始一貫『いい思い』しかしていない。少年時代には頼みもしないのに性欲の処理をしてくれて、青年時代にはドラマチックな精神の葛藤を提供してくれて、最後に(21歳年上の)彼女が死んでやっかい払いができるなら、『いい思い』のうちですよ。だいたい、この『ぼく』ってやつがスカしたヤな野郎なのだ。自分はいつも安全圏にいて、つべこべ思索してるだけ。で、この小説は、そんな知識階級のダメ男をたかだか『朗読』という行為によって、あっさり免罪するのである」と続きます。
「インテリの男性が好むインテリ男に都合のいい小説。なんてわかりやすいんだろう」。
「少年の心に知識の皮をかぶせて悶々とするぼくちゃん文学。身も蓋もないむき出しの小説ばかりの時代だから、こういうのが世紀の大傑作になっちゃうのか。知識人のおじさんたちって・・・いや、最後まではいわないでおきます」。これだけ言いたい放題で、未だ言い足りないというのでしょうか。
ことほどさように、驚かされると同時に、楽しめる辛口書評集です。