愛欲と物欲に塗れた30代後半の女の運命は?・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1644)】
幸運にも、アキアカネの雌が糞をする瞬間を目撃しました。アキアカネの雄、ツマグロヒョウモンの雄、モンシロチョウをカメラに収めました。あちこちで、ヒヨドリが盛んに鳴いています。ジュウガツザクラ(十月桜)、キダチチョウセンアサガオ(エンジェルズトランペット)、秋バラの花を見かけました。因みに、本日の歩数は10,572でした。
閑話休題、『強き蟻』(松本清張著、文春文庫)は、愛欲と物欲に塗れた30代後半の女が主人公です。
ホテルに泊まりにきた不倫相手の佐伯義男と沢田伊佐子のベッドでの会話。「『だいたい、奥さんのような身体つきの人は、ひとりの男では満足できないように出来てるんですよ』。『失礼なことを云うのね』。『げんに(愛人の)石井とそうだったじゃないですか?』。『あれは、わたしの意思じゃないわ。不意を襲われたのよ。あんたと同じ・・・』。『それにしては石井とは腐れ縁がつづいていた』。『おどかされたのよ。(夫の)沢田にばらすというもんだから。悪党よ』。『そればかりとは思えませんね。まだ石井に奥さんのことをはっきり聞ける段階じゃありませんがね』。『わたし、そんなに淫乱に見えて?』。『そういう云い方はしたくないな。体質ですよ。ぽっちゃりとした小肥りで、色が白くて、肌のきめが緻密で、腰まわりの張っている女性は、だいたいそういう傾向ですね。ひとりで夜寝ているのがつらくなる性質(たち)です』。以前、(不倫相手の)塩川も似たようなことを云っていた。しかし、口では云えないが伊佐子に思い当るところがあった。とくにこうしてホテルに寝ていると、ひとりでに昂奮することが多かった。身体の血が騒いで容易に寝つかれず、つい手が癖になっているところに行ってしまう」。
遺産目当てで30歳も年上の会社役員と結婚した伊佐子は、早急に金を手にしなければならない必要に迫られ、策略を巡らします。伊佐子の周りには、欲望に身を焼かれて蠢き回る人間たちが群がってきます。
どろどろとした物語の最後の最後に、思いがけない展開が待ち構えています。さすが、松本清張ですね。