榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

各ページから野鳥の鳴き声が聞こえてくるような、野鳥と山旅の本・・・【情熱的読書人間のないしょ話(886)】

【amazon 『野鳥と共に 四季の山旅』 カスタマーレビュー 2017年9月19日】 情熱的読書人間のないしょ話(886)

散策中に、翅がボロボロのジャノメチョウを見つけました。厳しい生活が偲ばれます。ヒメジャノメも見つけました。オンブバッタは、小さな雄が大きな雌に乗っています。エンマコオロギの雌には長い産卵管があります。セスジスズメというガの幼虫が私の前を足早に横切っていきました。右が頭で、尾角がある左が尻です。因みに、本日の歩数は12,874でした。

閑話休題、『野鳥と共に 四季の山旅』(大津雅光著、白山書房)は、各ページから野鳥の鳴き声が聞こえてくるような、野鳥と山旅の本です。

「野鳥と過ごす山旅は、汲めども尽きない楽しい思い出がいっぱいである。四季にわたって野鳥と共に歩いた思い出と豊かな時間は何物にも代えがたく、ぼくの宝物である。鳥たちとあるぼくはいつも平穏で心は満たされ、歌を唄いたくなるように楽しい。野鳥を友としたことによって、ぼくの人生はどれほど豊かになり、楽しいものとなったかは、言葉に尽くせない。早いもので、探鳥の山歩きを初めて60年余りになる」。

「山道に踏み入ると、森や雑木林ではたくさんの野鳥たちの歌声に満ち溢れ、心地好いシンフォニーが幸せな気持ちにさせてくれる。鳥のさえずりに聞きほれ、ささやきに耳をそばだて、華麗な振る舞いにこころが躍る」。

登った山ごとに、著者の手になる野鳥のカラー・イラストが添えられているが、これが興趣を盛り上げてくれます。

稲包山(1598m、新潟・群馬)――オオルリさえずる新緑の森から見晴らし絶景の山頂へ。「麗しの美声でオオルリがさえずっている。この辺りの雑木林は芽吹きを迎えたばかりで、山全体が柔らかい薄緑色に染まっている。耳を澄ますとオオルリのさえずりが少し離れた谷間の方からも聞こえる。5月の山にやってきて、オオルリのさえずりに巡り会えた時ほど幸せな気持ちになれることはない。しばらく立ち止まって歌声を心ゆくまで愉しんだ」。

黒檜山(1828m、群馬)――上信越国境・日光連山の大展望とアオゲラのドラミング。「鞍部まで下って駒ヶ岳の登りにかかると、アオゲラのドラミングが聞こえてきた。タラララララ・・・タラララララ・・・と幹に嘴を打ちつけるキツツキ特有の自己表現。毎年、残雪の山にアオゲラやアカゲラのドラミングが響き始めると、冬の足音が次第に遠のいていき、急ぎ足で春がやって来る。ピオーピオーとよく通る声でアオゲラが鳴きだした。早春の山道に爽やかにこだまするアオゲラの鳴声は極上のBGMだ」。我が家の近くの森の中で、私が初めてピオーピオーという遠方まで通る声を耳にした時は、鳥の鳴き声とは思えませんでした。

両神山(1723m、埼玉)――トラツグミ鳴く八丁峠から鎖場の連続する岩稜を行く。「峠に通じる山道は次第に勾配を増し、深い森の中に九十九折りが続く。ヒーヒョー・・・ヒーヒョー・・・前からだろうか、後ろからだろうか、右手からだろうか、左手からだろうか・・・声の所在がなかなかつかみにくい。ゆっくり歩いていくと、右手前方から聞こえてくるようだ。ちょっとつかみどころのないような鳴声だが、これでもトラツグミの正調なさえずりなのだ。閑寂な森の奥から流れ出てくる、とどまることのない幽玄な声を聴いていると、深山に分け入って来たんだなあ、という雰囲気が漂って気持ちが落ち着く」。

達沢山(1358m、山梨)――万緑の森に響くアオバトの声、尾根を飾るヤマツツジの群落。「カヤノキビラノ頭から西の尾根に踏み入ると、緑鮮やかな若葉に飾られたブナの巨木が次々と現れた。樹冠からオーアオー、オーアオーと鳴くアオバトの声が流れ出した。遠くの方でも鳴いている。こっちの方はウーワオー、ウーワオーと唸るような声を続けて発している。頭から胸にかけて明るい黄緑色をした美しい山のハト。北海道から九州まで落葉広葉樹のよく繁った山地の森林で繁殖、冬は温暖な地方へと移動する。山から集団でやって来て、海岸の岩場で海水を飲む特異な習性があり、関東地方では丹沢のアオバトが大磯海岸にやって来ることが知られている。・・・冬場、家の近くの都立水元公園で越冬するアオバトがいて、クロガネモチの赤い実を食べる姿がバードウオッチャーの人気を得ている」。

剣山(1955m、徳島)――爽やかなアカハラのさえずり、展望豊かな山頂。「左手、木屋平の方の深い谷間を見下ろしながら、ゆっくり登って30分、刀掛の松まで来ると枯れたモミの巨木の梢にとまったアカハラが四周を見渡しながらキャララン、キャララン、チリリー・・・キャララン、キャララン、チリリー・・・と声量ある声でさえずり続けていた。・・・アカハラのさえずりはぼくの一番好きな歌声で、このさえずりを聴くと、いつも50年以上も前の山中湖畔での中学生時代の林間学校3年間を思い出し、追憶の世界に引き込まれてしまう」。

全ページに、野鳥が大好きな著者の熱い思いが籠もっています。