囲碁界の最高峰・井山裕太の頭の中、心の内が覗ける本・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1010)】
千葉・印西の木下(きおろし)、小林の史跡巡りに参加しました。約12~13万年前は、この木下貝層の辺りまで古東京湾が広がっていたそうです。道作古墳群は前方後円墳7基、円墳14基、方墳1基で構成されています。笠神城跡には堀が残存しています。龍湖寺には、女人たちが奉納した大絵馬が遺されています。地蔵寺では、仁王が睨みを利かせ、享保8(1723)年銘の庚申塔が祀られています。竹袋稲荷神社の石段はかなりの急勾配です。因みに、本日の歩数は34,105でした。
閑話休題、将棋の駒の動かし方は分かりますが、囲碁については何も知りません。そういう私が『勝ちきる頭脳』(井山裕太著、幻冬舎)を手にしたのは、年間グランド・スラム達成者にして史上初の2度の七冠達成者の井山裕太という人物の頭の中、心の内を覗いてみたかったからです。
著者は、囲碁というものをどう考えているのでしょうか。「そこ(最終盤)でものを言うのが、譲歩であれ決行であれ、自分の選択しようとしている道が『本当に正しいのかどうか』の裏付けをとるための『読み』です。読みを入れてみて間違いないとなったら、それを実行する――囲碁というのは結局、この繰り返しをしていくよりほかないのではないでしょうか。それで自分の読みが間違っていたら、自分に実力がなかったということですから、それはそれでもう仕方がありません。ですから僕は、決行であれ譲歩であれ、自分の読みを信じます。そしてリードが多くあるに越したことはないので、読みを入れた結果『決行しても大丈夫』ということになれば、リスクはあっても『最善』の道を選択するようにしています」。
「勝負の先行きに関しては楽観的に見て、現局面は悲観的に捉えるといったところでしょうか」。
「過去に解いてきた無数の詰碁から導き出された『経験による直感』で、この思考法が、実戦における全局的着手の決定においても使われるのです。・・・その局面に至るまでの手順には、必ず『流れ』があります。自分がこう打つと相手はこう打つという具合に、一手一手にストーリーがあるのです。・・・対局中は僕の中でストーリーがあり、その『流れ』の中で着手選択をしているので」す。
「『読み』とは『先を見通す力』なのですが、この能力には当然ながら差があります」。
「囲碁において最も重要なのは、その『読み』によって導き出した無数の出来上がり図を、どう判断するかなのです。プロの間でも差が出るのは、この『判断』の部分であると言っていいでしょう」。
「ミスを認めて『どういう状況であっても、なるべく同じ心理状態で見る』ことが大切です。ドライに割りきって、自分がミスをしたことを潔く認める。今、目の前の一手に集中するのです。プロとして相当な屈辱ではありますが、それをできる人が勝者となれるのです」。
「(僕は)可能性がある限りは粘って、逆転を追求するタイプです。勝利という目的に向かって全力を尽くす姿や、盤上の技をファンの皆さんに観ていただくのが、僕の役割だと考えているからです」。
「僕の場合で欲と言ったら、『探求心』ということになるのでしょうか。自分を高めたいという欲です」。
「棋士ならば誰もが、自分の打った碁を並べ直し、反省を行なっているはずです。この復習なくして、成長はありえません」。
中国や韓国の一流棋士が若い時は強いが、30代、40代になると急に衰えてしまう理由、アルファ碁やZenといった人工知能に対する考え方についても、著者の興味深い見解が語られています。
碁をやらない私にとっても学ぶことの多い一冊です。