栄枯盛衰は世の習いとはいうものの・・・【情熱的読書人間のないしょ話(27)】
女房と私の散策コースの一つに、森の入り口まで我が家から歩いて20分ほどの「おおたかの森」があります。正式な名称は「市野谷の森」ですが、この森では、オオタカが繁殖し、ノスリ、ハヤブサ、ツミ、チョウゲンボウ、ハイタカ、フクロウなどの猛禽類、タヌキ、ホンドギツネ、イタチ、ニホンノウサギ、アカネズミ、アライグマ、ハクビシンなどの哺乳類が棲息しています(なお、アライグマとハクビシンは、問題となっている外来種です)。と言っても、これらの生物にいつも出くわすというわけではありません(笑)。
閑話休題、『沈みゆく帝国――スティーブ・ジョブズ亡きあと、アップルは偉大な企業でいられるのか』(ケイン岩谷ゆかり著、井口耕二訳、日経BP社)を読んで、複雑な気持ちになってしまいました。著者が、盛田昭夫引退後のソニーに、スティーブ・ジョブズ亡き後のアップルの将来を重ね合わせているからです。
「皆が敬愛し、同時に恐れたリーダーが没したあと、混乱したり力を失ったりした帝国は、昔から枚挙にいとまがない。(ティム・)クックは、アップルがそうならないよう上手にかじを取れるのだろうか。・・・ジョブズとクックは、あまりに対照的だ。一方はカリフォルニア州の創造的な天才で、当意即妙。とにかく機転が利くことで有名だ。対してもう一方はアラバマ出身で業務の鬼才。すさまじい合理性で有名だ」。
「スティーブ・ジョブズが亡くなって2年もたたないうちに、絶大な支配力を誇る帝国は足元がふらつき、審判を受けなければならなくなりそうな状態になってしまった。アップルはかつてないほど快調だとジョブズの後継者たちが言えば言うほど、世の中からは疑いの目を向けられてしまう」。「ジョブズが亡くなってからの2年間、アップルが根本的に変わったことが明らかになるのと歩調をそろえるように、辞める社員が増えている」。
アップルにとってはかなり厳しい著者の将来予測が説得力を持つのは、著者がウォール・ストリート・ジャーナル時代に、極秘主義を貫くアップルのトニー・ファデル(iPodの父と呼ばれる)の辞任、ジョブズの肝臓移植手術、iPad開発をスクープした凄腕記者だからです。
本書では触れられていませんが、2014年7月23日に発表されたアップルの第3四半期業績は「まずまずだが素晴らしいとは言えない」と、アナリストたちは判断しています。