榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

バロックとは何か・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1032)】

【amazon 『バロックの光と闇』 カスタマーレビュー 2018年2月19日】 情熱的読書人間のないしょ話(1032)

マンサクが黄色い花を咲かせています。赤い花はアカバナマンサクです。サンシュユが蕾を付けています。アケボノアセビが釣り鐘状の桃色の花をまとっています。花粉を生産する雄花をびっしりと付けたスギを目にした途端、花粉症の女房は逃げ出しました(笑)。因みに、本日の歩数は10,306でした。

閑話休題、『バロックの光と闇』(高階秀爾著、講談社学術文庫)は、バロックの世界の案内書です。

バロックとは何なのでしょうか。「17世紀から18世紀の中頃にかけて、美術、建築、音楽、演劇など、時には文学をも含めて、さまざまの芸術分野において西欧世界全体を風靡した雄大壮麗な表現様式」と説明されています。

バロックとは本来、「歪んだ真珠」を意味したとのことだが、何と比較して歪んでいるというのでしょうか。「『歪んだ』とか『不規則な』とかいう観念は、当然のことながら、本来の『歪んでいない』、『規則的』なものを前提としている。『バロック』が芸術表現と結びつけられて美術史上の様式概念として成立するのは19世紀になってからのことだが、その時、『バロック』と対比的に、本来の完全な表現様式として考えられたのが古典主義である。というよりも、もともと完成された表現様式としての古典主義がまずあって、その枠に収まりきらない奔放多彩な表現を『バロック』の特質として規定したといった方がいっそう正確であろう」。

古典主義が晴朗な昼の世界であるとすれば、バロックは光と闇のせめぎ合う夜の世界だというのです。「カラヴァッジオの作品では、強力な投光器から発せられたような強烈な光が画面を斜めに切り裂く。その筋道にあるものは鮮明に浮かび上がるが、陰の部分は深い闇のなかに沈み込む。光と闇のこの極端な対比は、それだけで強い劇的効果を生み出す。あらゆる点において激越な表現を好んだバロックの精神にとって、それはまことにふさわしい方法である。事実この時代、ヨーロッパのいたる所で、カラヴァッジオ風の明暗表現が風靡した」。

「光と闇のドラマを、最も多様なかたちで、そして最も見事に描き出したバロックの画家として、われわれはレンブラントの名前を忘れるわけにはいかない。・・・そのいずれの作品においても、明部と暗部の強い対照、激しいせめぎ合いが画面の緊張感を高めている点でも、特筆すべき存在である」。

残念ながら、バロック音楽についての言及が少ないのは、著者の次のような認識が影響しているのでしょう。「かつて18世紀において、奇妙で風変りな音楽が『バロック』と形容されたことはあるが、明確な様式概念として『バロック』が用いられるようになったのは20世紀にはいってからのことで、それはまず、建築、絵画、彫刻などの美術史の領域で登場した。このバロック美術が17世紀から18世紀にかけてヨーロッパ全体を風靡したところから、この時期を『バロックの時代』と規定する時代概念が生まれ、それに伴って、音楽や文学など美術以外の芸術ジャンルにもバロックの様式概念が適用されるようになった」。