・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2935)】
ホオノキ(写真1~3)、ユリノキ(写真4~6)、ヤマボウシ(写真7、8)、ベニバナヤマボウシ(写真9、10)が咲いています。我が家の庭師(女房)から、ジャーマンアイリス(写真12)、サツキ(写真13)、バラ(写真14、15)、ボンザマーガレット(写真16)が咲き出したわよ、との報告あり。
閑話休題、短篇集『愛(新装版)』(ウラジーミル・ソローキン著、亀山郁夫訳、国書刊行会)に収められている『シーズンの始まり』には、戦慄という言葉では表せないほどの衝撃を受けました。
「白樺林が途切れ、(狩猟官)クジマ・エゴールイチは右に進路をとりはじめた。二人(エゴールイチとセリョージュ・セルゲイ)は小さな草原を横切り、地面に食い込んだ丸石の塊を迂回して、エゾマツの林に入った」。
「空き地の縁に近づいたとき、彼(エゴールイチ)は口を閉ざしたままセルゲイに一本の高いエゾマツの木を示した。セルゲイは頷くと、銃を地面に下ろし、リュックサックからロープとカセット用の小さなテープレコーダーを取りだした」。
「狩猟官は体を固くして森の奥を見つめていた。テープレコーダーはイカれた男たちの歌を歌い終えると、次に、銃を撃たなかった男の歌を流しはじめた。狩猟官とセルゲイはそのまま身動きせずに待ちかまえていた」。
「セルゲイは木立の間にずんぐりした人影をみとめ、銃の照準板にそれをとらえた」。
「ずんぐりした小柄の男が枯れ枝をがさごそいわせながらエゾマツに駆け寄ってくる。セルゲイは銃を持ちあげ、汗でぬれた両手のふるえを抑えながら照準を合わせ、二連発銃を同時に発射させた。ズドーンという銃声が、針葉樹の木立から聞こえてくる歌をかき消した。暗い人影はどさりと倒れ、起きあがろうともがきだした。セルゲイがせわしなく弾を込めているあいだ、狩猟官は茂みから身を起こし、自分のトルコ銃を二発ぶっ放した。身動きは止まった」。
「二人は銃を構えたままそろそろと近づいていった。男は三十メートルほど先のところに両手を大の字に広げ、小さな蟻塚に頭を突っ込んだまま転がっていた。狩猟官が先に近づき、動かなくなった男の脇腹を長靴でつついた。死体は動かなかった。セルゲイは靴で血だらけの頭をこつこつと叩いた」。
「『健康体だな』。狩猟官は笑いながらつぶやき、ポケットから折り畳み式のナイフを取りだすと、巧妙な手さばきで死体の上着を切り裂いていった」。
「狩猟官は巧みに頭部を切り落とし、靴で転がすと、深く息を吸い込みながら、大きく背伸びをした。『血を出しきってから、さばきにかかるか・・・』」。
「『これで肝を火にかけられるな』。狩猟官は腸をほじくりながらつぶやいた。『そうですね』。セルゲイが答えた。『炭火にかけてね』。『そう、鉄棒に載せりゃいい。そう、新鮮な生肉ってのはじつにうまくてね・・・』。『わかってますよ』。セルゲイはそう言って微笑み、もう一度水筒を口元に寄せた。『さあ、初猟を祝って、エゴールイチ』。『初猟おめでとう、セリョージュ』」と終わっています。
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