「私がその企業の社長だったら」という発想が身に付くケーススタディ集・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1067)】
東京・三鷹の国際基督教大学の正門から600mに亘りソメイヨシノの並木が続いています。レンギョウ、ユキヤナギとのコントラストが鮮やかです。
閑話休題、『勝ち組企業の「ビジネスモデル」大全』(大前研一著、KADOKAWA)で著者が言いたいことは、3つにまとめることができます。中国企業・アリババを例に引いて、①「顔認証」による決済システムが構築されている、②8億人ものユーザーを抱えており、その8億人に関するビッグデータ活用システムが構築されている、③AI技術を使った融資、すなわちお金を貸すシステムが構築されている――ことを強調しています。
この3つがいかに凄いことかは、下記を見れば明らかです。①については、顧客は、もはや支払いのためにスマホを取り出す必要もないのです。それだけでなく、アリババは、その顧客がいつどこで何をしているかということまで、対象とする人間全てを管理下に置くことができるのです。②については、全ての顧客に信用度の高低を示すクレジットスコア(信用評価点)を付けているのです。③については、顧客にお金を貸すサーヴィスシステムの処理スピードを驚異的に速めることに成功しているのです。すなわち、スマホのアプリから融資申請をすると、コンピューターが瞬時に融資判断を下して数分で送金される超高速融資システムが運用されているのです。「こんなことが可能なのは、アリババはビッグデータの蓄積・解析によって『この人にはいくらお金を貸しても大丈夫』『この人にはいくらまでしか貸せない』という判断が瞬時にできるからです。日本なら、何十年も付き合っている銀行でも。融資の件は別部署になりますなどと言って別の人間がやってきて、嫌になるくらい多くの申請書類を書かされるなど少額のお金を借りるのにも大変な時間と労力がかかりますが、アリババだと『3・1・0』であっという間にお金が振り込まれてしまうのです」。「3・1・0」というのは、融資申請の記入に必要な時間がスマホで約3分、融資の可否を判断する時間が1秒、AIが審査をするので、審査を行う人間は0人という意味です。
「勝ち組企業のビジネスモデルはアリババやテンセントがフィンテック分野で体現しているようなモデルだと言うこともできます。『銀行になろうと思えばいつでも銀行になれる企業』です。アリババやテンセントは明日にでも銀行になれるし、彼らが日本の銀行を1つ買ってしまえば、世界中で銀行家ができて、半年もあれば世界最大の銀行になるでしょう」。アリババは、瞬時に世界最大の銀行になれるというのです。著者は、今のままでは、近い将来、銀行はもとより、さまざまな分野において日本は中国に好きなように握られてしまうと、危惧しています。
そこで、「私がその企業の社長だったら」という発想で自分なりの解を導き出すための実践的ケーススタディとして、日本企業が実名で27社取り上げられています。
ビジネスパースンが実力を養うには、最適な一冊です。