紹介されている本を読みたい気分にさせる、巧みな名作書評集・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1080)】
あちこちで、ハナミズキが咲いています。白い花弁、赤い花弁のように見えるのは総苞です。ベニバナトキワマンサクが桃色、赤色の花をまとっています。ドウダンツツジが釣り鐘状の白い花をぶら下げています。ネモフィラが水色の花を咲かせています。レッドロビンが赤い新葉を付けています。因みに、本日の歩数は10,297でした。
閑話休題、『名作なんか、こわくない』(柚木麻子著、PHP研究所)では、世界の名作57冊が取り上げられています。「こんな本読んだな、と思い出してもらえたり、知らないけど面白そうだな、と思ってもらえたら、とても嬉しいです。読む気はまだ起きないけど、この名作ってなんとなくこんな話なのか、と記憶してもらえたら、私なりの『世界名作劇場』になったのではないかと思います」。「世界名作劇場」というのは、著者が幼い頃、よく見ていた、古典児童文学を原作にしたアニメのテレビ番組です。
著者のセンスのよさが、キャッチ・コピーに表れています。例えば、「何不自由ない主婦が破滅へまっさかさま『ボヴァリー夫人』」、「男と対等に付き合えるかっこよさ『谷間の百合』」、「<女のドロドロ>の盲点『危険な関係』」、「堕落するヒロインの心情がよくわかる『居酒屋』」、「紳士が娘に与えた<モテ教科書>『クレーヴの奥方』」、「美容テクニックが学べる!『愛の妖精』」、「18世紀に生まれた元祖ラヴコメディ『高慢と偏見』」、「我慢せず、日々を謳歌する妻の可愛らしさ『お菓子とビール』」、「目を背けたい<性分>を描き切る『嵐が丘』」、「直球で愛を要求する主人公のすがすがしさ『ジェイン・エア』』、「目の前の一瞬を貪り尽くす女の息吹『ダロウェイ夫人』」、「怖くて切ない極上のミステリー『春にして君を離れ』」、「悪評が魅力や財産に変わる時『緋文字』」、「欲望に正直な女の子を肯定してくれる男性『風と共に去りぬ』」、「ゆるやかに花開く少女のきらきらした毎日『この楽しき日々――ローラ物語(3)』」、「憎めない男のピュアで不器用な片想い『グレート・ギャツビー』」、「寂しいのにどこか明るいダイナー(=プレハブ式レストラン)の輝き『郵便配達は二度ベルを鳴らす』」――といった具合で、これらを読んだ時、書評で取り上げた時、私など全然思いもつかなかった秀逸な惹句ばかりです。
「読まなければ損をする物語『悪女について』」は、こう紹介されています。「有吉佐和子の傑作『悪女について』を読んでいない人は、人生の半分くらい損をしていると私は声を大にして言いたい。女性の魅力の正体や、欲しいものを手に入れた時の恍惚とむなしさについて、ここまで突き詰めて描いた物語、それも活字をごくごくと呑み干すような快感を得られる物語はそうそうない。戦後のどさくさに紛れ富も名声もほしいままにした富小路公子が謎の死を遂げ、彼女に関わった27名の人物が自分の中の『公子』を聞き手に語り出す。その印象が27通りすべて違っているというグラデーションはぞくそくするほど贅沢だ。本を閉じた後、どんなに抗おうとも、読者こそが28人目の証言者になってしまう構成は何度読んでもしびれる」。ここまで言われたら、『悪女について』を読まないわけにはいかないでしょう。私も早速読んで、痺れたいと考えています。