榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

読書の楽しみを早いうちから身につけておいて、本当によかった・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2471)】

【読書クラブ 本好きですか? 2022年1月22日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2471)

我が家の庭の常連のジョウビタキの雄(写真1~3)、メジロ(写真4~7)、ヒヨドリ(写真8、9)をカメラに収めました。

閑話休題、エッセイ集『ドク・ホリディが暗誦するハムレット――オカタケのお気軽ライフ』(岡崎武志著、春陽堂書店)のあちこちに、興味深いことが書かれています。

「実在の人物が、小説の中に出てくるというのは、当人にとってもうれしいはず。ピアニストの中村紘子は『赤頭巾ちゃん気をつけて』に名前が出てきたことが縁で、著者の庄司薫と結ばれた」。早速、書斎の書棚から『赤頭巾ちゃん気をつけて』を引っ張り出してきて、確かに、「中村紘子さんみたいな若くて素敵な女の先生について優雅にショパンなど弾きながら暮らそうかなんて思ったりもするわけだ」という件(くだり)があることを確認しました。

「取材した俵(万智)さんの著書『牧水の恋』にも、ところどころ大阪弁による突込みが出てくる。ふだんは標準語だが、父親が大阪弁を使うため、ときおり出てしまうとのことである。私は『その気』になって大阪弁で話を聞いたが、途中から俵さんも大阪弁にシフトしていくのが楽しかった。学習指導要領の変更により、国語教育が『実用』と『文学』の選択になる(大ざっぱに言って)という話題を振ったら、『それは、あかん!』とおっしゃったので、うれしくなった」。

「名手丸谷才一のエッセイ集『男のポケット』に、上手なスピーチの実例が紹介されている。気象学の和達清夫によるもの。これが素晴らしい。『いつも当たらない天気予報を流しまして。みな様に御迷惑をおかけしている和達でございます。新郎新婦は箱根にいらっしゃるそうですが、明日の箱根地方は快晴であります』。短くて、ユーモアがあって、洒落ていて、最後が明るい」。

「原寮の(直木賞)受賞作(『私が殺した少女』)について『探偵のカンがよすぎる』という批判があった。(選考委員の)田辺(聖子)は『探偵というのはカンがいいものですよ』とすぐさま反論した。ここへ『(笑)』を入れたくなる。田辺聖子は、非常に健全な文学鑑賞願を備えていたことが、この一件で知れるのだ」。純粋なミステリーが直木賞を受賞したのは、この作品が初めてだったと記されています。

「(宇野千代の『色ざんげ』は)徹頭徹尾、男女の恋愛のことしか書かれていない。若い複数の女に振り回される中年男性はどこか滑稽であり、それゆえ切実でもある。『源氏物語』を思わせる色恋沙汰の明け暮れを描いた『色ざんげ』は、宇野の作家的技量を示すものだ。湯浅は宇野の愛人だった東郷青児をモデルにしているが、男を視点の中心において、男女間の駆け引きを冷静に描いている。これはとても男では描き切れない世界である」。無性に、『色ざんげ』を読みたくなってしまいました。

「野崎(孝)訳によるが、(『グレート・ギャツビー』は)溜息が出るような美しい文章で綴られる『滅びの美学』だ。京都にいる頃、街のどこにいても大晦日にはどこかの寺かでつく除夜の鐘が響いてきた。あのしんしんと冷え込む空気の中で読む『(グレート・)ギャツビー』と除夜の鐘ほど似つかわしいものはない、と思えたものだ。真底、貧乏な学生だったが、その時だけは心が豊かだったのだ。読書の楽しみを早いうちから身につけておいて、本当によかったと思う。残る人生怖いものなし、である」。全く同感です。