「女中」と呼ばれる女性が存在した昭和期の考現学・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1087)】
我が家の庭の片隅で、白いクルメツツジが咲き始めました。散策中、薄橙色の花を付けたレンゲツツジを見つけました。桃色のクルメツツジ、赤橙色のキリシマツツジが満開を迎えています。薄紫色のミツバツツジが目を惹きます。これ以外にも、あちこちで、さまざまなツツジが咲き競っています。因みに、本日の歩数は10,509でした。
閑話休題、『女中がいた昭和』(小泉和子編、河出書房新社)は、「女中」と呼ばれる女性が存在した昭和期の考現学の書ですが、こういう書物は珍しいと言えましょう。
女中の一日――炊事、裁縫、洗濯、掃除など――、女中訓(女中の仕事のやり方や心構えを説いたマニュアル本)、女中部屋の絵、写真、説明などから、当時の女中の生活実態が生き生きと甦ってきます。私が幼少の頃、我が家にも遠い親戚の女性が住み込んで、私たち家族を世話してくれたことを懐かしく思い出しました。
ただ、看過できないのは、「女中と性」の章です。「女中の多くは年も若く、他人の家庭に住み込んで働くために、主家の男性の性欲の対象とされることが多かった。妻が出産や仕事で留守にしているときや、風呂で主人の背中を流すときなどにいたずらをされたり、主人に誘惑されて関係を持ち、妊娠してしまうなど、さまざまな悲劇が起こっている」。
「戦前は法律的に女性の人権が保護されていなかったうえ、『女遊びは男の甲斐性』といわれるほど、男性に対する性道徳は寛容なものだった。このため、多くの女性がその理不尽さに泣かされていたが、立場の弱い女中には、そうした問題がもっとも先鋭的にあらわれたのである」。