榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

暗黙知を重視して、知識創造企業を目指せ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1109)】

【amazon 『知識創造企業』 カスタマーレビュー 2018年5月5日】 情熱的読書人間のないしょ話(1109)

芳香を放つニオイバンマツリの花は、咲き始めは紫色ですが、やがて白色に変わっていきます。あちこちで、クレマチスがいろいろな色合いの花を咲かせています。ウンシュウミカンの花が芳香を漂わせています。小さな実を付けています。ウンシュウミカンを初め、ナツミカン、アマナツ、ハッサク、マイヤーレモンといったミカン科の花は、いずれも似通っていて、香りもよく似ています。因みに、本日の歩数は10,824でした。

閑話休題、『知的創造企業』(野中郁次郎・竹内弘高著、梅本勝博訳、東洋経済新報社)が研究対象としている日本企業の中には、その後、業績不振に陥った企業も含まれているが、本書の提言はいささかも古びていません。

本書は、人間の知識を2種類に分けています。「一つは『形式知』と呼ばれ、文法にのっとった文章、数学的表現、技術仕様、マニュアル等に見られる形式言語によって表すことができる知識である。この種の知識は、形式化が可能で容易に伝達できる。またそれは、西洋哲学の伝統において主要な知識のあり方であった。しかし、より重要なのは、形式言語で言い表すことが難しい『暗黙知』と呼ばれる知識なのである。それは人間一人ひとりの体験に根ざす個人的な知識であり、信念、ものの見方、価値システムといった無形の要素を含んでいる。暗黙知は、人間の集団行動にとってきわめて大事な要素であるにもかかわらず、これまで無視されてきた。それはまた、日本企業の競争力の重要な源泉でもあったのである。これが、日本的経営が西洋人にとって謎であった大きな理由であろう。・・・重要なのは、この2つの知の相互作用という『ダイナミクス』が企業による知識創造の鍵なのだ、ということである。『組織的知識創造』とは、そのような相互作用がくり返し起こるスパイラル・プロセスなのである。・・・暗黙知と形式知、個人と組織の2種類の相互作用は、①暗黙知から形式知へ、②形式知から形式知へ、③形式知から暗黙知へ、④暗黙知から暗黙知へ、という知識交換の4つの大きなプロセスを生み出すのである」。

「知識創造」が社会科学のキー・コンセプトの一つになると主張しています。「『知識創造』というコンセプトで組織のマネジメントのすべての分野(企画、製品開発、人事、生産、マーケティング、会計等々)を再検討・再構築しようという新たな経営学パラダイムの提唱である。本書の提示する理論的枠組と様々なコンセプトによって、これまでの企業経営の戦略、組織、プロセスなどについてのこれまで断片的なモデルや実務的手法を、『知識創造』という視点から改めて統合しようというのである。さらには、これまで情報社会論者が学際的に行ってきたネットワークの研究や経済学者が研究してきた技能形成や人的資源などの諸テーマも知的創造の概念で説明できる」。

欧米型企業経営と日本型経営が対比されています。「欧米にとって中間管理職が必要悪としてリストラの対象と見なすのに対し、我々は有能なミドルこそ組織的知識創造の増幅機能を果すと主張した。・・・コンピュータは知的創造の支援ツールにしか過ぎず、知を創造することができるのは人間だけだ」。

日本的経営の問題点・課題が剔抉されています。「我々は、日本的経営から組織的知識創造という基本原理を抽出したが、現実に行われている日本的経営には多々問題があることは承知している、最も顕著なのは、大方の日本企業では確かに知識創造が各部署で行われているが、企業全体として組織的知識創造への体系的な取り組みがあまりないことである。・・・我々は人間の知的創造能力を大切にするのが経営のあるべき姿であると考える。現在の日本企業を見ると、とても個人の知識創造能力を意識的に大切にしているとは思えない。今求められているのは、日本的経営を知識創造能力の養成と発揮という観点から再構築することなのである」。

実務者が企業内で組織的知識創造を計画・実行するためにとるべき7つのガイドラインが具体的に示されています。「①知識ビジョンを創れ、②ナレッジ・クルーを編成せよ、③企業最前線に濃密な相互作用の場を作れ、④新製品開発のプロセスに相乗りせよ、⑤ミドル・アップダウン・マネジメントを採用せよ、⑥ハイパーテキスト型組織に転換せよ、⓻外部世界との知識ネットワークを構築せよ」。