榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

『黒衣の花嫁』は、『幻の女』に劣らぬミステリの傑作・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1114)】

【amazon 『黒衣の花嫁』 カスタマーレビュー 2018年5月10日】 情熱的読書人間のないしょ話(1114)

毒草、薬草として知られるジギタリスが、さまざまな色合いの花を咲かせています。キンギョソウも、いろいろな色合いの花を付けています。因みに、本日の歩数は10,738でした。

閑話休題、私の一番好きなミステリ『幻の女』(ウィリアム・アイリッシュ著、稲葉明雄訳、ハヤカワ・ミステリ文庫。出版元品切れだが、amazonなどで入手可能)の作者のもう一つの筆名名義の作品『黒衣の花嫁』(コーネル・ウールリッチ著、稲葉明雄訳、ハヤカワ・ミステリ文庫)を手にしました。

株式仲買人・ブリスは17階のパーティ会場のテラスから突き落とされて死亡。みすぼらしいホテル住まいの年金生活者・ミッチェルは自分の部屋で酒に青酸カリを盛られて死亡。会社員・モランは自宅の物置に閉じ込められて窒息死。画家・ファーガスンはアトリエで心臓を矢に射貫かれて死亡。それぞれの事件の犯人と思われる女性は、事件ごとに名前も髪の色も服装も異なりますが、これらは同一犯による連続殺人事件に違いないと睨んだ刑事・ウォンガーは、2年半に亘り謎の女の足跡を追い続けます。

それぞれの殺人をし遂げるまでの息詰まるような緊迫感。じりじりと真相に迫っていく刑事の粘り強さ――『幻の女』に見劣りしないミステリの醍醐味を堪能することができました。

そして、何と、最後の最後に、思いもかけぬどんでん返しが待ち構えています。

訳者後書きに、「山本周五郎作『五瓣の椿』はこれに想を得たといわれている」と記されています。つい先日、『五瓣の椿』(山本周五郎著、新潮文庫)を読んだばかりですが、『黒衣の花嫁』の強烈な刺激が山本を衝き動かしたというのは、十分あり得ることでしょう。