旅行で訪れた先々で、かつての同僚女性社員が次々に殺されるとは・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1358)】
シクラメンには、さまざまな品種があることを知りました。ヨハン・シュトラウス、ワインレッド、ファルバラ、ファンタジア、プルマージュ・オレンジ、マーブルピンク・ホワイトエッジ、リップスピンク、シルバーエッジ、ミネルバ、マーブルキャンディ、アフロディーテ、ロマネ・パープル、ビクトリア、スクリュースター(淡桃色)、スクリュースター(白色)、ストロベリーフラッペ、フリンジ・ホワイト・ウィズ・アイ――と、舌を噛みそうです(笑)。因みに、本日の歩数は10,519でした。
閑話休題、ずっと年下の散歩仲間・読書仲間の松村典子さんと推理小説の話になった時、好きな日本の推理作家・作品を尋ねられ、松本清張と草野(そうの)唯雄と答えました。清張はいろいろ読んでいるとのことなので、草野の『解明旅行』(草野唯雄著、光文社、カッパ・ノベルス)を挙げて、その魅力を力説しているうちに、無性に『解明旅行』を読み返したくなってしまいました。
外国の推理小説では、ウィリアム・アイリッシュ(コーネル・ウールリッチ名義でも他の推理小説を執筆)の『幻の女』(ウィリアム・アイリッシュ著、稲葉明雄訳、ハヤカワ・ミステリ文庫)が一番好きだが、日本では『解明旅行』に先ず指を屈さざるを得ません。因みに、草野が敬愛してやまない作家がアイリッシュなのです。
関東相互銀行本店を総務部次長で定年退職した巽(たつみ)耕平は、かつて部下であり、その後、後妻に納まった治子とともに、退職記念旅行に出発します。一時期、同じ会社で巽の部下として、治子の同僚として働き、そして去っていった女性社員たちは、15年後の今、どこで、どんな人生を送っているのか。指宿の淵美津江、福井の徳納光子、佐渡の島田節子、塩釜の戸塚千春を順に訪ねるスケジュールに沿って旅は進むが、なぜか巽夫婦と再会を果たした直後に、美津江、光子、節子が殺されるという不可解な事件が発生します。
妻には内緒にしていたが、巽は、社長派と専務派の抗争下で起こった15年前の専務変死(毒殺?)事件に妻を含む5名の女性社員の誰かが関与していたのではないかと疑っており、その解明旅行も兼ねていたのです。
「人間とは何か? 生きるとは何か? 『愛』が人生のすべてだなど、口にすることのできる人は幸せだ。そんなことを言っていられないほど、生活の重荷に打ちひしがれた人々はどうなる。病いに倒れた人々はどうなる。『愛』がそれを解決してくれるのか? やがて、何かを払い落とすように首をふって、巽はスタートした」。
「『これが愛情というものなんですよ、あなた。愛する者のためなら、人は喜んで自分の命を投げ出すというじゃありませんか。あたしの場合もそのとおりだったんですよ。それをあなたは、無駄だとおっしゃるんですか?』。・・・巽は心で詫びた」。
これまで国内外の推理小説を読み漁ってきたが、ユニークな発想、秀逸なプロット、巧みに描き分けられた登場人物、文章に漂うしっとりとした情感に止まらず、人生とは何か、男女の愛とは何かを考えさせるミステリは、そうそうあるものではありません。ミステリの生命線ともいうべきサスペンスの連続なので、時間を忘れて一気に読み通してしまうことになります。さらに、思いもしなかったどんでん返しが何度も用意されているのです。