アインシュタインとフロイトの往復書簡から、私たちが学ぶべきこと・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1121)】
スズメの幼鳥は嘴基部が黄色みを帯びています。ヒヨドリが大きく口を開けて囀っています。ヒメウラナミジャノメを見かけました。シロヒトリというガの幼虫の歩くスピードの速さに驚かされました。我が家の庭の片隅で、紫色のマツバギクが咲き始めました。桃色、白色のペチュニアも一斉に咲き始めました。因みに、本日の歩数は10,715でした。
閑話休題、『ひとはなぜ戦争をするのか――脳力のレッスンⅤ』(寺島実郎著、岩波書店)に収められている「ひとはなぜ戦争をするのか――そして、日本の今」という考察がとりわけ強く印象に残りました。
「1932年、85年前の夏、アインシュタインとフロイトという20世紀の知性を代表する二人の間で、『ひとはなぜ戦争をするのか』というテーマをめぐる刺激的な往復書簡が交わされた。この往復書簡には興味深い背景があり、第一次大戦の悲劇を教訓として1920年にジュネーブに設立された国際連盟が、物理学者アインシュタインに対して『最も大事だと思う問題について、最も意見交換をしたい相手と書簡を交わす』という要請をし、アインシュタインが提起したテーマが『人間を戦争というくびきから解き放つことはできるのか』であり、書簡を交わす相手として選んだのが、『夢の精神分析』の著者で心理学の大家フロイトであった」。
フロイトがどう答えたのか、気になりますね。「人間には『二つの欲望』が潜在し、対立していると語る。一つは『愛(エロス)』であり、保持し統一しようとする欲望、もう一つは『攻撃本能』で、破壊し侵害しようとする欲望だという。そして、この対立は善悪などではなく相関・促進し合うものであり、『人間から攻撃的な性質を取り除くなど、できそうもない』と言い切る。その上で、フロイトは戦争を抑制するものとして、文化の大切さに言及するのである。『文化の発展を促せば、戦争の終焉に向けて歩み出すことができる』というのがフロイトの結論といえる』。
著者は、この往復書簡が交わされたのが、まさにナチが台頭してきた時期であり、ユダヤ人のアインシュタインは書簡を交わした翌年に米国へ、同じくユダヤ人であるフロイトは6年後に英国へ亡命を余儀なくされたことに言及し、「1932年のこの往復書簡は一瞬の邂逅であり、知の火花が飛び交った瞬間であった」と記しています。
現在の日本に思いを致すとき、「『反知性主義』が跋扈する今日、無力に見えるフロイトの議論だが、再考に値する本質論だと思う。・・・世界潮流は、トランプやプーチンが発するメッセージや北朝鮮、中国の圧力を受けて、『力こそ正義』の空気が溢れつつある。反知性主義が大手を振る状況の中で。苦難しつつも、やはり私は『文化力』と『知の力』にこだわりたいと思う。憎しみの連鎖を抑えるのは知性(文化)であり、日本を再び誤らせてはならない」と、警鐘を鳴らしています。
全く同感です。知性がないと自分自身の頭で判断できず、権力者の巧みな言い回しに騙され易くなってしまうからです。