貰い湯にきた隣家の二つ年上の少女のために薪をくべる少年・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1128)】
ほぼ毎晩、我が家にやって来るニホンヤモリが、アクロバティックな姿勢で獲物を待ち構えています。散策中、真っ黒なドバトを見かけました。あちこちで、スイセンノウが鮮やかな赤紫色の花を咲かせています。メドーセージ(サルビア・ガラニチカ)の青い花が芳香を漂わせています。アカツメクサ(ムラサキツメクサ)に寄生するヤセウツボが群生しています。ヤマグワが赤い実を付けています。熟すと黒くなります。因みに、本日の歩数は10,859でした。
閑話休題、『土へのオード13・火へのオード18・水へのオード16』(新川和江著、花神社・新川和江文庫)に収録されている、風呂の火の番をする少年を詠った詩は、私の心を震わせました。
「少年は粗朶(そだ)をひとつかみ 膝株にあてがってパシッと折った 湯かげんも訊かず 少年はまた粗朶をくべた 二つ歳上の隣家の少女が貰い湯にきているのだった 焚口にしゃがみ 火の番をしている少年の むっつり怒ったような顔が ほてりにほてり 背にした闇が濃いので うらおもての判然(はっきり)した真新しい銅貨のよう ――梅の香がする 細めにあけた湯殿の窓をそうっと閉めて 少女は湯ぶねに肩までつかり なにも見なかったふりをして ちいさい声で 花いちもんめをうたった」。
少年にとっては、胸がどきどきする経験だったでしょう。壁一枚隔てた所に、隣の年上の少女が裸でいるのですから。これは、当時少女だった新川和江の実体験でしょう。
この詩を読んで、状況は異なるが、風呂にまつわる私の体験を思い出しました。ある夏の夕刻、中学生だった私が裏木戸を通って隣家の二つ年下の少年に会いにいった時、幼い弟が顔を出して、「お兄ちゃんはいないけど、お母さんはいるよ」と言いながら、突然、風呂場の戸を開けたのです。何と、少年の母親が胸を隠しながら、うずくまっているではありませんか。慌てて家に駆け戻りましたが、友の、まだ若く綺麗ですらりとしたお母さんの白い裸身が頭に焼き付いてしまいました。もちろん、母にはこのことは言えませんでした。