この書評集のせいで、読みたい本が大量に増えてしまった・・・【情熱的読書人間のないしょ話(679)】
野鳥たちが、私を怖がらなくなったのは、私が鳥好きで無害な人間という認識が鳥たちの間で広がっているからでしょうか(笑)。キジバト、ハシブトガラス、ツグミ、ハクセキレイ、オナガガモのカップルをカメラに収めました。ボケが橙色の花を咲かせています。カシワは枯れ葉が幽霊のようで、クスノキは踊り出しそうです。和風の庭がある店で一服しました。因みに、本日の歩数は10,316でした。
閑話休題、『気がついたらいつも本ばかり読んでいた』(岡崎武志著、原書房)は、書評家・岡崎武志の書評+エッセイ集です。
さいとう・たかを著『俺の後ろに立つな――さいとう・たかを劇画一代』の書評「『ゴルゴ13』が40年続いたワケ」は、こんなふうです。「連載が始まったのは1968年というから、40年を超える大河作品。その生みの親がさいとう・たかをだ。・・・剛直な線とリアルな作劇法で大人の読者を納得させる劇画という新しいジャンルを作り上げたのだ。・・・コミック史の流れで、さいとうの存在が大きいのはもう一点、早くに制作における分業制を敷いたこと。マンガ家がアシスタントを使うのとは違って、脚本担当、構成担当、作画担当と役割分担がはっきり決まっている。その総まとめをさいとうが担う。映画で言えば『監督』だ。・・・『ゴルゴ13』誕生と制作の秘密の関係もファンにはありがたい」。
『文藝別冊 総特集 山田太一』の書評「心に、体に、刻み込まれている」は、出だしから見事です。「ぼくたちは山田太一でできている。はっきり、今そう言える。酒場や喫茶店で、50年輩同士が山田太一体験を語り出すと、あのセリフ、この場面のことでわあわあと、まあ盛り上がること。・・・『冬構え』『早春スケッチブック』『岸辺のアルバム』など、テレビドラマで時代をつくった脚本家へのインタビューに始まり、全作品解説、名セリフ、山田太一論と完璧な布陣。こういうのを待っていた」。
吉田暁子著『父 吉田健一』の書評「まっすぐに生き、書きつづった人」は、吉田健一・暁子親子への優しい眼差しに満ちています。「吉田暁子は健一の長女。『父 吉田健一』で、思い出の数々、あふれる思いを見事な文章でつづる。時の首相を父に持ちながら、その財産に頼らず筆一本で家族を守った文学者が吉田健一。その生活は規則正しく『まっすぐ』だった。・・・まるで父の血が受け継がれたような、秘めやかで美しい文章だ。『一日の移ろいで父が愛したのは夕方』だった。本書のテーマは『時間』とも言える。父と過ごした濃密な時間を娘が慈しみながら回想する。そのとき本書は、娘が父に宛てた恋文みたいに読める」。
その書評を読んだ人が、そこで取り上げられている本を読みたくなる書評がいい書評だと、私は考えています。本書のせいで、読みたい本が大量に増えてしまいました。