韓国の歴史を概観することができる一冊・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1202)】
剪定した枝の束の下にオカダンゴムシがたくさんいるわよと、庭の女房から声がかかりました。オカダンゴムシたちに交じってコスナゴミムシダマシがいました。
閑話休題、『物語 韓国史』(金両基著、中公新書)のおかげで、韓国の神話の時代から大韓民国、朝鮮民主主義人民共和国樹立までの歴史を概観することができました。
とりわけ興味深いのは、518年間続いた朝鮮王朝時代です。
朝鮮王朝の成立は、このように記されています。「1392年7月17日、高麗の将軍李成桂は、新しい波、改革派におされて高麗王朝を引き継ぐ形で王位につくことになった。このとき李成桂は58歳を迎えていた」。李太祖(李成桂)は即位して2年目に国号を朝鮮と改め、政治改革に着手するが、王子たちと近臣との激しい勢力争いに悩まされます。
1418年、第4代世宗王が王位に就きます。朝鮮王朝の政治・文化の基礎を固め、訓民正音(ハングル)を創制したことで知られる名君です。「ハングルは世界の文字のなかで、もっとも合理的につくられた文字だとされている。それは世界の言語学者たちの共通見解に近い。当初28文字だったが、現在は24文字からなっており、子音14、母音10を組み合わせることによって、無数の音を表記することができる」。
1455年、首陽大君が甥の端宗王から王位を簒奪して第7代世祖王となります。「世宗大王によって築かれた善政は、王の死後わずか数年で、その第2王子(世祖王)の手によって葬られてしまった。世祖王の王位簒奪は、その後、王位継承をめぐるトラブルを誘発し、国政の乱れをも誘発することになった」。
朝鮮が1592年の壬辰倭乱(文禄の役)、1597年の丁酉倭乱(慶長の役)で豊臣秀吉の命を受けた日本軍に侵攻されたのは、第14代宣祖王の時代のことです。
1636年、第16代仁祖王の時代に、朝鮮は、明を圧倒しつつあった清の侵攻を受けます。「(清に降伏した朝鮮では)親明派は一層され、朝鮮朝はこのときから清が日清戦争によって日本に敗ける1895年までの258年間、清に服属することになった。・・・それは党派抗争が高じ、国際情勢を的確に把握できず、国論を統一できなかった、国王と執権層の国政怠慢がもたらした大禍であった」。
18世紀に第21代英祖王、第22代正祖王が王位に就くが、朝鮮王朝のお家芸とも言うべき党派抗争は収まりませんでした。
私は韓国歴史ドラマのファンです。『宮廷女官チャングムの誓い』は、第11代中宗王の時代が舞台となっており、『トンイ』のヒロインは、第19代粛宗王の側室で第21代英祖王の母がモデルとなっており、『イ・サン』は、第22代正祖王その人の物語です。
『宮廷女官チャングムの誓い』(DVD-BOX『宮廷女官チャングムの誓い』<イ・ビョンフン演出、イ・ヨンエ、チ・ジニ出演、バップ>)は、不幸な両親の間に生まれたヒロイン、チャングムが、苦労して宮廷料理人となり、身分制度の壁を打ち破り、遂に第11代中宗王の主治医に上り詰めるまでの波瀾に富んだ生涯が描かれています。チャングムが随所で聡明さを発揮し、苦境を乗り越えていく展開に拍手を送りたくなります。
『トンイ』(DVD-BOX『トンイ』<イ・ビョンフン監督、ハン・ヒョジュ、チ・ジニ出演、MBC/Lydus Content Company> )は、ヒロインである宮廷の奴婢のトンイが、苦労を重ねて女官となり、第19代粛宗王の寵愛を受けて側室へと異例の出世を遂げ、後の第21代英祖王の母となるまでの波瀾万丈の一生が描かれています。聡明さと前向きな精神力で宮廷を巡る激烈な党派抗争の波を潜り抜け、自分の息子を王にすることに成功した淑嬪崔氏がモデルです。トンイの生き方から何度も勇気を与えられました。
『イ・サン』(DVD-BOX『イ・サン』<イ・ビョンフン、キム・グノン演出、NBC/KIMJONGHAK PRODUCTION>)の主人公イ・サンは、第22代正祖王がモデルです。反対勢力から何度も暗殺されそうになりながらも、陰謀渦巻く宮廷内の派閥闘争を制して王位に就いたイ・サンは、数々の政治改革を推し進めるが、47歳という若さで亡くなります。ハングルを創制した第4代世宗王と並び、名君の誉れが高い王です。王位に就いてからも暗殺事件が頻発するなど、物語の最初から最後までハラハラ・ドキドキさせられっ放しでした。