榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

二足歩行が人類の進化を促した、脳の増大はずっと後のことだった・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1211)】

【amazon 『6つの化石・人類への道[新生代]』 カスタマーレビュー 2018年8月17日】 情熱的読書人間のないしょ話(1211)

キウイフルーツが黄土色の実をたくさん付けています。ナツミカンが実っています。ザクロの実が色づいてきました。ヤブカラシの薄緑色の花弁は、開花後半日ほどで散ってしまいます。白いキノコを見つけました。秋が来たかと思われるほどの涼しさです。因みに、本日の歩数は10,913でした。

閑話休題、『6つの化石・人類への道[新生代]――化石が語る生命の歴史』(ロナルド・R・プロセロ著、江口あとか訳、築地書館)では、新生代、すなわち約6600万年前からおよそ300万年前までの化石発見の歴史が扱われています。

現生のアフリカゾウより巨大なサイがいたというのです。「パラケラテリウムは史上最大の陸生哺乳類だ。肩高は4.8メートル、体の長さは8メートルあり、体重はあらゆるゾウやマストドンよりも重かった」。「パラケラテリウムは新生代に起こったサイ類の大進化の一例である」。

最古の人類の化石を探す人々の熱意は、さまざまなドラマを生み出しました。「1960年代と70年代を通して、人類学、霊長類の進化、そしてヒトの古生物学を学ぶ学生は誰しもラマピテクスが『最初のヒト族』であると教わった」。ところが、「ラマピテクスの下顎は単にオランウータンの類縁の顎であり、たまたまヒト族に見えただけだったのだ。・・・こうして、1400万年前という古さのヒト族の化石は存在しないことを古生物学者は知ったわけだ」。

フランスの古生物学者ミシェル・ブリュネと共同研究者らは、非常に重要な標本を発見します。「なんとなく類人猿の頭骨に似ていたが、ヒト族の特徴もあったのだ。彼らはすぐに発掘し、硬化剤に浸して、キャンプに持ち帰った。・・・2002年7月11日、彼の論文は傑出した学術雑誌『ネイチャー』に掲載された。ブリュネはその標本を、発見場所であるチャドのサヘル地域にちなみ、またチャドのフランス語の綴りを用いて、サヘラントロプス・チャデンシスと命名した。ブリュネと共同研究者らは、チャドのダザンガ語で『生命の希望』を意味する『トゥーマイ』という愛称をつけた」。

「サヘラントロプスには、ブリュネらが指摘するように、チンパンジーやほかの類人猿よりもヒト族に近いことを明らかに示す特徴がいくつかある。顔が平らでほとんど吻がなく、類人猿の顔とは異なっている。犬歯は小さく、類人猿の大きな牙のようではない。その歯は口蓋のまわりにC字型に並んでおり、ほとんどの類人猿に特徴的な細長いU字型ではない。さらに重要なのは頭骨の底にある穴(大後頭孔)の位置で、脊髄がその穴を通って脳につながっているのだが、穴が頭骨のちょうど真下に位置しており、頭蓋の後方に傾いていない。頭骨が脊髄の上に真っ直ぐのっており、チンパンジーやほかの類人猿のように脊髄の前方に垂れているのではないことを示している。この最後の点はきわめて重要だ。20世紀のほとんどを通して、人類学者は、脳の大きさが人類の進化に影響を与えたもっとも重要な要素であり、二足歩行の直立した姿勢などの特徴は二次的なものだという偏見を持っていた。しかし、過去30年間に発見されたヒト族の化石の多くは、ルーシー、アルディピテクスからオロリンまで、明らかに完全に二足歩行だったが、脳は小さかった。そして、既知の最古のヒト族の化石であるサヘラントロプスもまた、頭骨が脊髄の真上にのっていた証拠を示している。二足歩行は人類の進化で最初に起こった適応の一つであり、わたしたちの脳が大きくなったのはずっと後のことだった。この認識からは――平らな顔と小さな犬歯、そしてヒト族のような上顎の形と合わせると――サヘラントロプスはほかのどの類人猿よりもヒトに近い生物だということになる。新発見が今後もあるとは思うが、今のところ『トゥーマイ』が最古のヒト族の記録を持っている。そして、700万~600万年前というその年代は、チンパンジーとヒト族が分岐した年代として過去40年間、分子生物学者たちが予測してきたものにぴったり合うのである」。この、脳の増大よりも二足歩行が先行したという指摘は、人類の進化を考えるとき、非常に重要な意味を持っています。

【本書では「ヒト族」という用語が使われているが、「ヒト亜族」と表記すべきと、私は考えている。ヒト族には、ヒト亜族とチンパンジー亜族が含まれるからである】

多数の図が掲載されているが、化石の写真と、生きている姿の復元図が並べられているので、理解を深めることができます。