著者自身が採集し飼育中の鳴く虫の写真がずらりと並ぶ、入魂の図鑑・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1262)】
散策中、吸蜜しているウラナミシジミ、ツマグロヒョウモンの雄、ツマグロヒョウモンの雌、イチモンジセセリを見つけました。キンケハラナガツチバチの雄も吸蜜しています。ケイトウが赤い花、黄色い花を咲かせています。イヌサフランが薄紫色の花を、キバナタマスダレ(ステルンベルギア・ルテア)が黄色い花をたくさん付けています。因みに、本日の歩数は11,073でした。
閑話休題、一つの分野を極めるというのは、こういうことなのかと目を瞠らされる本に出会いました。
『図鑑 日本の鳴く虫――コオロギ類 キリギリス類 捕り方から飼い方まで』(奥山風太郎著、エムピージェー)には、著者が好きで好きで堪らない日本の鳴く虫のほとんどが収録されています。
本書の驚くべき点を3つ挙げることができます。
第1点は、収録されている昆虫の種の多さです。例えば、日本に棲息するキリギリス科としては、キリギリス亜科22種、ヒサゴクサキリ亜科3種、クサキリ亜科10種、ササキリ亜科12種、ウマオイ亜科4種の5亜科51種が知られているが、本書では、よく鳴き目立つ種を中心に42種が紹介されています。
第2点は、ほとんどの種において、著者自身が採集し、繁殖させながら飼育観察中の生きた元気な個体が撮影されていることです。従って、一般的な図鑑とは異なり、被写体のポーズに統一性がありません。さらに、飼育経験がないと分からないような情報が解説に盛り込まれています。例えば、夏から秋にかけて、我が家のツゲの樹上でチッチッチッチッと小さな声で密やかに鳴くカネタタキについては、こう記されています。「非常に丈夫で長生きで飼育下では年を越すこともある。繁殖はやや難しい」。「北日本では少ないが、関東以西では樹上種としては最も馴染みのある種で、最盛期には都心でもそこら中から鳴き声がする。しかし姿を見るのは少々難しい。ゆえに、昔の人は本種の鳴き声はミノムシが鳴いているものと考えていた。枕草子に登場する『鳴くミノムシ』は本種のことである」。毎年、シーズン中は毎日のように鳴いているのに、私もその姿を見たのは、室内に迷い込んできたのを含め、たったの3回に過ぎません。
第3点は、鳴く虫の採集方法と飼育方法が詳細かつ懇切丁寧に説明されていることです。
心静かに、我が家の愛すべき訪問者であるカネタタキの鳴き声に聞き入りながら、本書を開くのは、私にとって至福の時間です。