榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

笑いに徹した浮世絵師・歌川国芳が描いた動物と妖怪が勢揃い・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1275)】

【amazon 『歌川国芳 いきものとばけもの』 カスタマーレビュー 2018年10月19日】 情熱的読書人間のないしょ話(1275)

カルガモの群れにマガモ(雄)が交じっています。ダイサギは、いろいろな動作をするので見飽きません。シュウメイギクが白い花を咲かせています。ヤマツツジが一輪だけ季節外れの花を付けています。カラスウリの実、フウセンカズラの実が鈴生りです。因みに、本日の歩数は10,624でした。

閑話休題、『歌川国芳 いきものとばけもの』(稲垣進一・悳俊彦著、東京書籍)には、江戸時代後期の浮世絵師・歌川国芳が描いた生き物と化け物が勢揃いしています。

「国芳は、戯画、武者絵、風景画、役者絵、美人画など幅広いジャンルで、動物たち、化け物たちを登場させながら、ダイナミックでアヴャンギャルドな作品を描いています。・・・登場するのは、猫を始めとして、犬、狸、狐、虎、猿、蛇など陸の動物たち、鳥や蝙蝠、蛙、魚、蛸、亀などの空と水の動物たち、そして鬼、天狗、土蜘蛛や妖怪まで、まさに国芳オールスターズという陣容です」。おかしく、かわいい動物たちと、恐ろしくもキュートな妖怪たちが自由奔放に躍動しています。

「本朝水滸伝豪傑八百人之一個 猪早太広直」は、源頼政の鵺(ぬえ)退治がテーマです。「(頼政が放った)矢は頭を貫き、天空から黒雲とともに稲妻を放ちながら墜ちてくる怪獣『鵺』。激闘する一瞬の描写が見事である」。

「道外(どうげ) 獣の雨やどり」は「テーマが雨やどりだが、そこに登場するのがすべて動物であるところが実にユニークだ。また彼らの動きが実に自然で生き生きしており、人と動物を同じ生き物として付き合った国芳ならではの作品だ。そして、それぞれの獣たちに相応しい職種や呼び名を当てがっているところに何ともいえぬユーモアが感じられる。また、着物の柄も彼らに合った図が選ばれている」。なお、「道外」は「道化」を意味しています。

「其のまま地口 猫飼好五十三疋 上中下」には、74匹の猫が描き込まれています。「『知口』とは語呂合わせのこと。猫の生態を東海道五十三次の宿場名の語呂合わせで表わした。猫好きの国芳だからこそ描けた猫絵の大傑作。猫の生態を通して江戸庶民の生活が見えてくるから面白い」。

「賢女烈婦伝 大納言行成女」は、躍動感に溢れています。「みごとな蝶の絵を本物と間違えてとびついた瞬間の猫が描かれている。あっけにとられる大納言行成の娘。猫にけとばされた筆入れからこぼれ落ちる筆、舞う絵紙――。一瞬の出来事が巧みに描かれており、正に千分の一秒のシャッターを切った決定的瞬間の写真も顔負け。国芳の描写力はさすがだ」。

「道外 化もの夕涼」は、私が一番気に入っている作品です。「これほど大らかで屈託のないおばけたちがこれまで描かれたであろうか。まさに国芳の独壇場。彼はこの画面でさまざまな遊びを仕組んでいる。・・・国芳は自らの『遊び心』を思い切りはばたかせ、遊びに没頭している」。腹黒い人間たちに比べれば、化け物たちがかわいく見えるのは私だけでしょうか(笑)。