重要な7つのテーマから日本史を眺めると、一気に理解が進む・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1301)】
我が家の周辺で、ヒヨドリたちが鳴き競っています。庭のマンリョウの実が赤く色づいてきました。ホウキギ(ホウキグサ、コキア)とハナミズキで我が家は赤く染まっています。
閑話休題、『日本史のミカタ――いっきにわかる! 7つの新しい「見方」が日本史学習の最強の「味方」になる!』(福田智弘著、河合敦監修、辰巳出版)は、重要な7つのテーマから日本史を眺めるという方式を採用しています。
「為政者」、「政治」、「経済」、「文化」、「外交」、「戦乱」、「衣食住」の7つですが、勉強になる記載が満載です。
例えば、「政治」では、●江戸幕府の政治体制は、全国の約4分の1という広大な直轄領を支配するためのものと、残り4分の3を支配する各大名を統制するための組織とで成り立っているわけです。幕府による4分の1の直接支配と4分の3の間接支配、それが幕藩体制と呼ばれるものの中身になります。
「経済」では、●戦国の覇王・織田信長は、いかなる方法でお金を儲けていたのでしょうか。決して国土が広いわけではない尾張国の織田家を支えていたのは、舟運からの税収です。伊勢湾の津島湊、熱田湊といった良港を押さえていた織田家は、ここから莫大な収入を得ていました。これがのちに信長の天下布武を支える資金源のひとつとなっていったのです。・・・戦国大名というと、武勇にすぐれた豪快な武将、というイメージがあるかもしれませんが、実際には、如才なく金儲けができるセンスを持った人物だけが、生き残れたのだといってもよいでしょう。戦国の世は、経済戦争の行なわれた時代でもあったわけです。
●(江戸幕府が行った貨幣の改悪とは)別の形での収入増を目指したすぐれた政治家がいました。田沼意次です。彼は主に商業との関わりで収入を増やそうとした人物です。・・・いつまでも第一次産業である農家からの年貢取り立てにばかり固執せず、商業資本と結びつくことで収入を増やそうとしたのが田沼意次だったのです。具体的には、「株仲間」と呼ばれる同業組合を積極的に公認して運上・冥加金(営業税、営業免許金など)を徴収したり、貿易を活発化させたり、銅・鉄・朝鮮人参などを幕府の専売制にしたりといったやり方です。こうした政策は、実際に功を奏しましたし、これまでとは違う、時代を先取りした新しい改革法であるとして、現代でも評価する人は多いようです。田沼意次は江戸幕府きっての経済通であり、真の改革者ともいえるのですが、彼の時代には浅間山の噴火や天候不順による飢饉が続きましたし、商人との癒着や賄賂が横行したとして世間の評判はあまり上がりませんでした。
「外交」では、●「はたして、明治維新は『革命』だったのか」ということが議論の的になることがあります。これは「革命」の定義にもよるのですが、『大辞林』にあるように、「支配者階級が握っていた国家権力を被支配者階級が奪い取って、政治や経済の社会構造を根本的に覆す変革」を「革命」とするならば、江戸幕府を倒したのが同じ武士という支配階級であったこと、形式的とはいえ、江戸幕府の上に存在していた天皇制自体は崩壊することなく存在し続けたこと、の2点を考え合わせると、明治維新は大きな政治変革ではあったものの「革命」ではない、という考えが成り立ちます。
随所で、著者の見解が明快に示されているので、めりはりの利いた一冊に仕上がっています。