榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

北九州監禁連続殺人事件の犯人・松永太は、史上最悪・最低の人間だ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1345)】

【amazon 『人殺しの論理』 カスタマーレビュー 2018年12月25日】 情熱的読書人間のないしょ話(1345)

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閑話休題、『人殺しの論理――凶悪殺人犯へのインタビュー』(小野一光著、幻冬舎新書)は、20年以上に亘り事件取材を続けてきた著者自身による殺人犯へのインタビュー集です。

とりわけ印象に残ったのは、酸鼻を極めた北九州監禁連続殺人事件の主役・松永太に関する章です。

事件の内容は、このようなものです。「最初の被害者となったのは、広田由紀夫さん。松永と(内縁の妻)緒方(純子)はマンションを契約する際の担当者だった由紀夫さに対し、言葉巧みに近づいて一緒に事業をやろうと持ちかけた。松永を資産家だと信じ込み、その気になった由紀夫さんが、勧められるまま彼らに娘の清美さんを預けたところ、松永は態度を豹変させ、由紀夫さんの社内での不正行為を持ち出して退職するよう迫り、自分たちとの同居を強要したのである、それからはありとあらゆる理由をつけてカネを要求し、由紀夫さんの金策が尽きたところで虐待が始まった。小学生だった清美さんが人質として松永たちの手元に置かれているため、由紀夫さんは逃げられずにいた。そのうえで松永らは通電の虐待を繰り返し、彼を衰弱させていったのである。由紀夫さんは厳寒期にもかかわらず、薄着で暖房のない浴室に閉じ込められたうえに、食事を制限され、ときには自身の糞便や吐しゃ物まで食べることを強要された。そうした結果、1996年2月に浴室内であぐらをかいたまま、上半身を前に倒した状態で死亡した。それを発見したのは、清掃にやってきた娘の清美さんである。松永は『ザ・殺人術』という本を参考に、由紀夫さんの死体の解体を緒方と清美さんに命じた。彼女らは浴室でまず首を切断する『血抜き』をしたうえで、包丁やノコギリを使って、各部位を細かく切り分けてから鍋で煮込んだ。そうして肉と骨を分離させ、肉はミキサーでさらに細かくしてペットボトルに入れ、近くの公衆便所などに捨てた。骨は細かく砕いて缶に入れ、旅客船から海に投棄して、跡形もなく処分したのだった」。

「続いて1997年4月から11月にかけて、松永は緒方純子が広田由紀夫さん殺害に関わったことを口実に、彼女の両親と妹夫婦、さらにその子供2人という、三世代の華族6人を北九州市のマンションに呼び寄せ、同居を強要した。善良で身内から犯罪者を出したことのない緒方家の親族を手玉に取ることは、松永にとってはたやすいことであり、あらゆる理由をつけて、緒方家から資産を次々と奪い取っていった。その前後に松永は緒方の母・静美さん、妹・理恵子さんとも強引に肉体関係を結び、そうしたことを家族全員が集まった席で公表するなどして、夫婦や親子間の分断を図った。加えて松永は、由紀夫さんに実行した通電による虐待も繰り返し、互いに不信を抱く緒方家を、恐怖で支配するようになる。そんななか、1997年12月にまず父・誉さんが、松永の指示を受けた緒方による通電によって死亡。遺体は緒方と静美さん、理恵子さん夫婦と娘の彩ちゃんの5人で解体した。続いて松永が静美さんへの通電を続けたところ、精神に変調をきたした彼女が奇声を上げるようになったため、浴室に監禁される。そして1998年1月、松永に指示された理恵子さんが静美さんの足を押さえつけ、理恵子さんの夫・主也さんが電気コードで首を絞めて殺害。遺体は緒方と理恵子さん夫婦、彩ちゃんの4人で解体した。同年2月、松永が理恵子さんへの通電を集中したことで、彼女も奇声を上げるようになる。そこで松永が殺害を示唆したところ、緒方と主也さんとの話し合いによって、主也さんが電気コードで首を絞め、娘の彩ちゃんが足を押さえて殺害した。彼女の遺体は緒方と主也さん、彩ちゃんの3人で解体した」。

「続いて松永は主也さんの食事を制限し、通電を繰り返すことによって衰弱させていった。浴室に閉じ込められ、痩せ細った彼に松永が眠気覚まし剤とビールを飲ませたところ、同年4月に死亡した。彼の遺体は緒方と彩ちゃんの2人によって解体された。翌5月、松永は『大人になったら復習するかもしれない』と緒方に甥の優貴くんの殺害を指示。彼の姉である彩ちゃんにも、『優貴はお母さん(理恵子さん)に懐いていたから、お母さんのところに返してやったら』と拭き込む。そこで緒方と彩ちゃんが電気コードで優貴くんの首を絞め、清美さんが足を押さえて殺害。彼の遺体は緒方と彩ちゃんの2人で解体した、その後、松永は彩ちゃんに通電を集中するようになり、10歳の彼女は2歳児のおむつが穿けるほどに痩せて衰弱した。そんな彩ちゃんに対して松永は、家族のところに行こうと『説得』し、6月に彼女は優貴くんが殺害された場所にみずから横たわると目を瞑った。そして緒方と清美さんが電気コードで首を絞めて殺害し、遺体は2人で解体した」。

「稀代の凶悪殺人犯である松永との面会が実現したのは、控訴審判決から1年2カ月後の2008年11月のこと」。私の知る限り、松永は史上最悪の人間だが、著者が面会した時も、史上最低の人間であることを露呈しています。

史上最悪・最低の人間、極悪非道、悪辣無比な松永が引き起こした、この凶悪事件を風化させてはいけないと痛感しました。