榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

モーパッサンの中篇小説と落語の共通点・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1350)】

【amazon 『宝石・遺産』 カスタマーレビュー 2018年12月30日】 情熱的読書人間のないしょ話(1350)

デコポンが実っています。カボスも実を付けています。因みに、本日の歩数は10,564でした。

ねえねえ大家さん、あっしはモーサッパン、おっと間違えた、モーパッサンの中篇小説ちゅうのは、あっしたちが登場する落語に似てると思うんですが、大家さんはどう思いますかい? 

誰かと思えば熊さんじゃないか。熊さんからモーパッサンの話を聞こうとは思わなかったねえ。私はモーパッサンの作品は『脂肪の塊』ぐらいしか読んでないが、別に落語のような感じは受けませんでしたよ。

それがどっこい、こんこんちきで、短篇集『宝石・遺産』(ギィ・ド・モーパッサン著、太田浩一訳、光文社古典新訳文庫)にへえてっる『遺産』なんぞ、まるで落語そのものなんですよ。でっぷりと肥えた役所の文書係のカシュランちゅう男は、同居している独身の姉が持ってる100万フラン(約10億円)の財産目当てで、娘のコラリーの婿探しに大童(おおわらわ)なんですわ。てんやわんやの末に、同僚の若手で出世意欲満々のルサブルを婿に迎えたはいいが、やがて亡くなった姉の遺言書に「全財産をコラリーの子供に贈るが、私の死から3年の間に子供ができなかった場合は、全財産を慈善団体に寄付する」と書いてあるから、さあてえへん。ところが、大柄で肉感的なコラリーとちびのルサブルの肉体的不一致だけでなく、性格的不一致も露わになって、期限内に子供ができそうにないってんで、新婚夫婦とカシュランに色男のマーズまで加わって、すったもんだの大騒ぎでさあ。

熊さん、それで、結末はどうなったのかい? 

おっと、それは読んでのお楽しみ。

何だい、そこまで聞かせておいて、お預けかい? ところで熊さん、おまえさんを見直したよ。モーパッサンを読んでるなんて、どうしてどうして、たいしたもんですよ。