幼い頃に親しんだ絵本『鉢かつぎ姫』を、久しぶりに読み返してみた・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1351)】
オナガ、ツグミをカメラに収めました。我が家の庭にヒヨドリがやって来ます。メジロのカップルが連れ立って、毎日、餌台に現れます。今年も今日一日となりました。因みに、本日の歩数は10,043でした。
閑話休題、エッセイ集『日本のヤバい女の子』(はらだ有彩著、柏書房)の中の「顔とヤバい女の子――鉢かづき姫」に触発され、幼い頃に親しんだ絵本『鉢かつぎ姫』(広川操一画、千葉幹夫・講談社文・構成、新・講談社の絵本)を読み返しました。
この絵本は、絵も文章も品があります。
「姫が十三さいになったとき、おかあさんがおもい病気にかかってしまいました。おかあさんは姫をそばによぶと、なみだながらにいいました。『せめて、おまえのきれいな花嫁すがたをみるまで、いきていたかった』。そして、手ばこを姫の頭にのせ、そのうえから、顔がかくれるほど大きな木の鉢をかぶせました。『これは、仏さまのおつげなのです。そのわけは、あとできっとわかるでしょう』。それからまもなく、おかあさんはなくなりました」。
「(三位中将という、とのさまの)やしきでは姫は『鉢かつぎ』とよばれました。しごとはふろたきです。水をくんだり、たきぎをはこんだりする、つらいしごとです。姫のすがたがきもちわるいといって、だれもそばにちかよりません。ただとのさまの四男、宰相だけは姫のきだてのよさに気づいていました」。
「(とのさまの)おくがたさまは、うばにそうだんしました。うばはいいました。『まず、宰相さまと鉢かつぎを、結婚させます。つぎに、お兄さまがたのお嫁さんたちに、あのすがたをみせるのです。嫁あわせをさせるわけです。鉢かつぎは、はずかしくなって、にげだすでしょう』」。
「ふたりのきもちが、仏さまにつうじたのでしょうか。(やしきをでていくため)姫があるきだそうとしたとたん、頭から鉢と手ばこがおちて、姫の顔があらわれたのです。宰相は、姫のあまりのうつくしさに声もでません。そのうえ、おちた手ばこからは、たくさんのお金や宝物がでてきました。『ああ、これはなくなったおかあさまからのおくりものです』」。
「『あの鉢かつぎが嫁あわせにでるそうな。なんというはじしらずでしょう』。やしきの人はみな、そううわさをしていました。いよいよ嫁あわせの日。宰相の兄たちは、きかざったそれぞれのつまとならんで、姫たちがはいってくるのをまっていました」。
「『宰相とはじしらずのむすめがはいってきたら、大声でわらってやろう』。兄たちは、そうおもって、まちかまえていたのです。宰相につれられ、姫がはいってきました。姫のうつくしさは、春の花、秋の月さえ顔をかくしたくなるだろうとおもわれるほどでした」。
短篇の絵入り物語『鉢かづき』(鉢かづき=鉢かぶり≒鉢かつぎ)は、当時の女子の教養的な読物として広く読まれた『御伽草子』の一つです。裕福な武士の娘が実母の死後、継母の企みによって家を追い出され、彷徨った末に、ある貴族の邸の風呂焚きに雇われます。その貴族の末息子に見初められ、やがて幸せな結婚をするという筋書きです。
この昔話は、さまざまな苦難を乗り越えて幸せを掴む女性の物語だが、大人になってから読むと、いろいろなことを考えさせられます。