デカダンとエロスの画家・クリムトの作品にノックアウトされてしまった私・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1466)】
ハシボソガラス、ムクドリをカメラに収めました。白い絨毯を敷き詰めたかのようなシバザクラ。オオアラセイトウ(ショカツサイ)が薄紫色の花を咲かせています。ウキツリボク(アブチロン)の赤い萼の先の黄色い花から雄蕊と雌蕊が垂れ下がっています。フジの花が重たげです。満開を迎えた隣家のジャスミンが芳香を放っています。因みに、本日の歩数は10,933でした。
閑話休題、『もっと知りたいクリムト――生涯と作品(改訂版)』(千足伸行著、東京美術)は、デカダンとエロスの画家、グスタフ・クリムトの生涯と作品を知るのに最適な一冊です。
とりわけ目を惹きつけられたのは、クリムトが本領を発揮した、豪華絢爛な「黄金様式の時代」の作品群です。
39歳時の作品「ユーディットⅠ」、39~40歳時の「金魚」、40歳時の「エミーリエ・フレーゲの肖像」、41歳時の「希望Ⅰ」、43歳時の「女の生の三段階」、45歳時の「アデーレ・ブロッホ・バウアーの肖像Ⅰ」、45~46歳時の「接吻」、47歳時の「ユーディットⅡ」――に、ノックアウトされてしまいました。
「ユーディットⅠ」――色仕掛けで敵将を泥酔状態にし、切り取った、血の滴る彼の「首を手に、胸をはだけたユーディットは正面を見つめているが、半開きの口、いまだ恍惚の境にあるかのような焦点の定まらない目には、官能のうずきはあっても、体を張って国を救った聖書の女性の面影はない」。
「金魚」――「大きな尻をこちらに向けて座る手前の裸婦の、品がないとも大胆ともいえるポーズ」が、何とも官能的です。
挑戦的で自信に満ちた「エミーリエ・フレーゲの肖像」――クリムトは生涯独身を通し、妻も家庭も持たなかったが、多くの女性を愛し、少なくとも14人の私生児がいたことが判明しています。エミーリエ・フレーゲは「クリムトの生涯の伴侶で、クリムトが死の床で呼び寄せたのもエミーリエだったが、しかし結局結婚はしなかった。互いに独身を通し、束縛のない自由な関係を維持できたのも、エミーリエが流行のブテッィクを経営することで、経済的に男に依存する必要のない『解放された』女であったことも大きい。・・・ただし、『大人の関係』といいながら、二人の間には性的関係はなく、その愛はプラトニックなもの。『心の愛』であったというのが一般的な見方である。エミーリエには求めることのできなかったクリムトの肉体的な欲望のはけ口となったのは、主に彼のモデルたちだった」。
「希望Ⅰ」――「悪びれる風もなくこちらをじっと見る妊婦」の「全裸で、しかも腹の出っ張りが最も目立つ横からの絵」は、衝撃的です。
「女の生の三段階」――「うら若い裸身の母親が幼な子を抱いているが、頭部を体に対しほぼ直角に、つまり水平にかしげ、目を閉じている・・・安らかに眠る我が子をいつくしむこの母親の閉じた目は、心にしみる母性の喜びを宿している。彼女の頭部やその上、下半身を包む華やかな装飾性とは対照的に、左の老婆は何の装飾もなく、みずからの老醜を恥じるように手で顔をおおっている」。
愛人と目される「アデーレ・ブロッホ・バウアーの肖像Ⅰ」――「顔と手以外はほとんど金箔、銀箔で埋め尽された、絵というより工芸品的な装飾性を見せる作品。ここに用いられた様々な装飾モチーフには、エジプト、ギリシャ、日本など、過去の芸術の影響が指摘されている」。
「接吻」――「女は恍惚の表情で首を直角に曲げているが、彼女を抱きすくめる男の顔はほとんど見えない。しかしそれだけになおさら、二人が当時愛人関係にあったとされる画家自身とアデーレ・ブロッホ・バウアーを秘かに描いている可能性は高い」。
「ユーディットⅡ」――「ユーディットの眼差しは戦慄的な妖気をただよわせている」。