榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

日本の偽書の検証を通じて、なぜ人々が偽書に惹かれるのかを論じた一冊・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1528)】

【amazon 『日本の偽書』 カスタマーレビュー 2019年6月25日】 情熱的読書人間のないしょ話(1528)

ヒペリカム・カリキナム(セイヨウキンシバイ)にホソヒラタアブがやって来ました。ラベンダー・スーパーの薄紫色の花やヨーロッパキイチゴ(ヨーロピアン・ラズベリー)の白い花でクマバチ(キムネクマバチ)が吸蜜しています。ラビットアイ・ブルーベリーが実を付けています。ローズマリーの周りをオオスカシバが飛び回っています。ムクドリの若鳥を撮影中に、ニホンカナヘビがいるわよ、という女房の声が聞こえたので、慌てて駆けつけました。因みに、本日の歩数は12,034でした。

閑話休題、『日本の偽書』(藤原明著、河出文庫)が読み応えがあるのは、日本の代表的な偽書についての解説が充実しているだけでなく、人々はなぜ偽書を信じるのか、偽書の何が人々を惹きつけるのか――という問いにも答えようとしているからです。

超国家主義者と関係の深い偽書として、『上記(うえつふみ)』と『竹内文献』が選ばれています。

『上記』は、貞応2(1223)年、豊後守護大名・大友能直らの撰になるという、天地開闢より神武天皇が大和に都を定める頃までの歴史を全篇神代文字で記したものです。

『竹内文献』は、越中に神代の都・高天原があり、そこに鎮座する伊勢神宮よりも古い皇室の宗廟、皇祖皇太神宮(天神人祖一神宮とも)の神主の後裔、富山県婦負郡神明村久郷(現・富山市久郷)の竹内家の歴史を中心にした古記録・古文書よりなります。神代の昔は日本が世界を支配し、キリストを初め世界の聖者たちが渡日したといった奇抜な歴史を記しています。

東北幻想が生んだ偽書として、『東日流外三郡誌(つがるそとさんぐんし)』と『秀真伝(ほつまつたえ)』が取り上げられています。

『東日流外三郡誌』は、津軽飯詰の庄屋という和田家に伝わったものとされています。蝦夷の後裔と称する安倍姓安藤(東)氏の歴史を記しています。大和朝廷の成立以前、蝦夷が日本の正当な支配者であったとしています。

『秀真伝』は、4世紀、景行天皇が神代以来の政道の根本を後世に伝えるため編纂させたという、全篇神代文字で記された長歌体神話伝説集です。

「記紀」の前史を名乗る偽書として、『先代旧事本紀(せんだいくじほんぎ)』と『先代旧事本紀大成経(せんだいくじほんぎたいせいきょう)』が論じられています。

『先代旧事本紀』は、平安初期に成立した偽書であり、『先代旧事本紀大成経』は、その派生本です。

承平6(936)年、矢田部公望が、我が国の史書の初めは聖徳太子撰の『先代旧事本紀』であり、『日本書紀』はそれを骨子にして書かれたと言い出したのです。『天皇記及び国記、臣連伴造国造百八十部并に公民等の本記』の大半は焼失しているのに、その幻の書が300年後に突如、完全な形で出現したのです。これは長く真書と信じられてきたが、現在では偽書であることが明らかにされています。