榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

「イラスト+文章+名場面の絵画」で、旧約聖書の全体像がよく分かる・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1555)】

【amazon 『旧約聖書の物語と絵画』 カスタマーレビュー 2019年7月21日】 情熱的読書人間のないしょ話(1555)

東京・杉並の荻窪の実家で、甥の長男Nの2歳の誕生日会が開かれました。孫Nの好物ということで、この日のために妹夫婦が育て、Nが摘んだミニトマトとブルーベリーも食卓に並びました。

閑話休題、『旧約聖書の物語と絵画――イラストで読む』(杉全美帆子著、河出書房新社)は、旧約聖書の全体像を知るには、最適な一冊です。イエス出現以前の物語が、イラストと簡潔な文章で説明されているからです。さらに、添えられている各名場面を描いた著名な絵画が鑑賞できるという、至れり尽くせりの配慮がなされています。

「旧約聖書とは?」に続いて、「創世の頃の物語」、「出エジプトの物語」、「士師の物語」、「イスラエル王国の物語」、「預言者の時代の物語」が順を追って紹介されていくので、理解し易いのです。

●創世の頃の物語=神がどのように世界を創造したか。最初の人間であるアダムとエバの物語、ノアの箱舟やバベルの塔などのエピソード。イスラエルの民の祖アブラハムとその子孫の物語。「ある日、蛇がエバの所にやってきて、禁断の木の実を食べるようそそのかした。その実はいかにもおいしそうだったのでエバは手に取って食べ、アダムにも勧めた。その実を食べた二人は、裸でいることが急に恥ずかしくなり、いちじくの葉で腰を覆った。・・・神は、二人をエデンの園から追放した。そして、永遠の命を奪い、男には食べ物を得る苦労を、女には子を産む苦しみを与えた」。

●出エジプトの物語=奴隷となっていたイスラエルの民を率い、エジプトを脱して、約束の地カナンを目指したモーセの物語。途中、十戒を授かり、神と民が契約を結んだエピソードは特に重要。「モーセは(シナイ山で)神から2枚の石板に記された『十の戒め』を授かった。一=私以外、他の神はあってはならない。二=いかなる像も作ってはならない。三=神の名をみだりに唱えてはならない。四=週の7日目を安息日とし、働いてはならない。五=父母を敬え。六=殺してはならない。七=姦淫してはならない。八=盗んではならない。九=偽証してはならない。十=隣人の家の一切の所有物をむさぼってはならない」。

●士師の物語=士師とは、内外に戦いが続くカナンの地で、イスラエルの民を導いた12人のリーダーのこと。ここでは特に有名なサムソンの物語を紹介。「(人並み外れた怪力の持ち主である)サムソンの弱点は美女。しかも敵であるはずのペリシテ人女性に惚れて、取り返しのつかないことに・・・。この美女デリラに騙されるサムソンのエピソードは、多くの画家たちによって描かれた」。

●イスラエル王国の物語=イスラエル王国の3人の王の物語。預言者サムエルによって最初の王に任命されたサウル、名君と誉れ高い2代目ダビデ、そしてイスラエル王国最大の智の王として知られる3代目ソロモンの物語。「ある日、ダビデは午睡のあと宮殿の屋上を散歩していたら、一人の女性が水浴をしているのを目にしてしまった。ダビデはバト・シェバを宮中に召し入れ、床を共にした。バト・シェバはダビデの子を妊娠した。・・・(ダビデの家臣で、バト・シェバの夫)ウリヤはダビデの思惑通り戦死した。夫を愛していたバト・シェバは悲しみに暮れた」。

●預言者の時代の物語=ソロモン王の後、南北に分裂し、存亡の危機に瀕するイスラエルの民に、神の言葉を語り続けた預言者たちの物語。またその時期のエピソード。「(ユディトは侍女を一人連れ、敵陣に乗り込んだ。敵将の)ホロフェルネスはひと目でユディトの美しさに魅了された。4日目の晩、ホロフェルネスは床を共にするためにユディトを呼び、大酒を飲んだ。そして(ユディトの)膝の上で正体なく眠ってしまった。夜半過ぎ、ユディトはホロフェルネスの刀を手に取ると、首めがけて振り下ろした。ユディトがホロフェルネスの首を味方の陣地に持ち帰ると、形勢は一気に逆転し、イスラエルは勝利をおさめた」。

聖書だというのに、あまりに人間臭いエピソードのオン・パレイドで、驚くとともに、親しみを感じました、