榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

『天国と地獄』は、現代劇としては日本映画の最高峰だ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1676)】

【amazon DVD「天国と地獄』 カスタマーレビュー 2019年11月18日】 情熱的読書人間のないしょ話(1676)

あちこちで、イロハモミジ、ドウダンツツジが紅葉しています。赤や黄色い花弁に見えるのは、ポインセチアの苞です。キク、コスモスも頑張っています。かわいそうな名前を付けられているヘクソカズラが茶色い実を付けています。因みに、本日の歩数は10,747でした。

閑話休題、1963年に公開された映画『天国と地獄』(DVD『天国と地獄』<黒澤明監督、三船敏郎・仲代達矢・香川京子・山崎努出演、東宝>)は、当時大学生だった私に強い印象を残しました。今回、56年ぶりに見直して、これは現代劇としては日本映画の最高峰であると確信しました。その理由は、3つあります。

第1は、2時間23分という長尺でありながら、息詰まるサスペンスの連続で緊迫感が途切れないこと。

製靴会社の常務・権藤の息子と間違えられて、運転手の息子が誘拐されてしまいます。犯人から要求された身代金は、当時としては破格の3千万円。3千万円がないと地位も財産も失うことになる厳しい社内状況に置かれている権藤は苦悩するが、運転手の息子のために、3千万円を犯人の指示どおり新幹線の洗面所の窓から投げ落とします。このことにより、子供は無事に救出されます。強かな知能犯と戸倉警部率いる捜査陣の予断を許さぬ頭脳戦から一瞬も目が離せません。

第2は、脚本、演出、演技のいずれもが高度な水準に達していること。誘拐犯が身代金受け渡し用の鞄を焼却処分したため、焼却場の煙突から牡丹色の煙が棚引きます。モノクロ作品でありながら、この煙のみがカラーという演出の工夫が強い印象を与えます。

第3は、人の命と金、金持ちと貧乏人、企業経営を巡る権力闘争、麻薬中毒の悲惨さを深く考えさせられること。なお、麻薬中毒から抜け出したい人にとっては必見の映画です。