榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

玉手箱で浦島太郎を殺そうとした乙姫が、殺人未遂罪に問われた・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1696)】

【amazon 『昔話法廷(Season2)』 カスタマーレビュー 2019年12月7日】 情熱的読書人間のないしょ話(1696)

冷たい雨が降り続いています。クリスマスが近づいてきましたね。

閑話休題、『昔話法廷(Season2』(NHK Eテレ「昔話法廷」制作班編、オカモト國ヒコ原作、イマセン法律監修、伊野孝行挿画、金の星社)では、昔話の登場人物たちが現代の裁判官裁判の法廷で裁かれるのです。

本書に収められている「『浦島太郎』裁判」の被告人は、玉手箱を使って、浦島太郎を殺そうとした罪に問われている乙姫です。

検察官曰く、「被告人の乙姫は、海の底にある竜宮城の主で、カメが連れてきた浦島太郎と出会いました。乙姫は浦島と恋仲になり、夫婦同然の暮らしを送るようになりました。しかし3年後、両親のことが心配になった浦島は、地上に帰ると別れを切りだしました。そのことに強いうらみをいだいた乙姫は、浦島を殺すことを決意。殺傷能力の高いけむりがつまった玉手箱をわたしたのです。地上にもどった浦島は、けむりを浴び、急激に老化。甚大な苦痛を受けました。乙姫が犯した罪は、刑法第199条、第203条の『殺人未遂罪』に当たります」。

弁護人曰く、「本件は浦島太郎の心ない言動で追いつめられた末の犯行であり、十分に同情の余地があります。刑を軽くして、『執行猶予』を求めます」。

証人に対する尋問、被告人に対する質問、最終弁論を経て、討議に至ります。裁判長曰く、「結果として人が死ななかったとしても、殺人未遂罪は重大な犯罪です。ただ、酌むべき理由はあるかもしれないので。これまでの人生観や恋愛観、また乙姫、浦島太郎、それぞれの立場で考えてみることが大切です」。

裁判員たちの甲論乙駁が続くが、残念ながら、結論は示されていません。