榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

セックスだけが生きがいというような人生は楽しいのだろうか・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1717)】

【amazon 『共喰い』 カスタマーレビュー 2019年12月28日】 情熱的読書人間のないしょ話(1717)

ソシンロウバイの花、ツバキの蕾、クロガネモチの実、ハボタンの葉をカメラに収めました。因みに、本日の歩数は10,554でした。

閑話休題、『共喰い』(田中慎弥著、集英社文庫)」の主人公、17歳の高校生・遠馬の50歳近い父親・円は、10歳年上の妻で遠馬の母親である仁子とは別居し、35歳の琴子と遠馬と暮らしています。近くのアパートの角の所で地面に腰を下ろし、声をかける男を待ち続けている40歳くらいの女とも関係を持っています。さらに、欲情を抑えられずに、遠馬の1つ年上の恋人・千種をも犯してしまうという大変な男です。その上、セックス時には、相手を殴りつけたり首を絞めたりすることで自らの快感を高めるという尋常ならざる性癖を有しています。そして、遠馬にも同じ性癖が受け継がれているのです。

「(朝の五時)階段の上から目だけで、豆電球のともっている座敷を覗く。見るのは初めてではない。大きくて厚みのある琴子さんに小柄な父が埋め込まれ、その肉の塊が、不自由を味わっているように、苛立たしげに、止まることなく動いている。・・・父が腰を振動させながら上半身を反らせると、琴子さんの髪を掴み、反対の手で頬を張った。肉の音から少し遅れて琴子さんの吐息が出、それに反応したように父の動きが速くなり、両手を首にかけて絞め上げる」。

彼らには、劇的な結末が待ち構えています。

小説を読むのは、別の人生を経験することだと誰かが言っていたが、その意味で、臨場感溢れる本作品はその役割を律儀に果たしています。ところが、私は決して聖人君子ではないが、登場人物たちのようにセックスだけが生きがいという人生は楽しいのだろうかと考え込んでしまいました。