榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

虫や鳥には、この世界はどう見えているのだろうか・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1718)】

【amazon 『虫や鳥が見ている世界(カラー版)』 カスタマーレビュー 2019年12月29日】 情熱的読書人間のないしょ話(1718)

ヒドリガモのエクリプス(繁殖羽に生え替わるまでの地味な羽色)の雄、マガモの雄、オナガガモの雄、雌、オオバン、カワウ、ハシブトガラスをカメラに収めました。因みに、本日の歩数は10,445でした。

閑話休題、『虫や鳥が見ている世界――紫外線写真が明かす生存戦略(カラー版)』(浅間茂著、中公新書)は、虫や鳥には、この世界はどう見えているのかを探った一冊です。

人間の目は、赤、青、緑の3色しか見えないが、虫や鳥は紫外線も見ることができます。著者が自作した紫外線カメラには、驚くべき世界が写っていたのです。

「モンシロチョウの雄は紫外線を吸収する」。モンシロチョウの雄の翅は紫外線を吸収し、雌は反射するので、彼らは雌雄を見分けることができるのです。

「キチョウの構造色は紫外線だけを反射する」。キタキチョウは雄の黄色い部分が紫外線を反射し、雌は吸収します。雄の翅が構造色を示すことで、互いに雌雄を見分けているのです。

「ヤマトシジミは太陽の下で求愛する」。ヤマトシジミの雄の翅の青色の部分に光が当たると強く紫外線が反射し、雌に強くアピールできるのです。

「紫外線を反射するアイリング」。メジロの白いアイリングは紫外線を強く反射するので、外部寄生虫の侵入があると容易に分かり、そういう個体は求愛対象から外されてしまうというのです。

「黄色い花は紫外線を強く反射する」。ミツバチなどは緑色と黄色の識別ができません。緑色の葉は紫外線を吸収し、黄色の花は紫外線を反射します。ミツバチに訪れてほしい黄色の花は、自分の存在をアピールするために紫外線を強く反射しているのです。

「ハシブトガラスは紫外線で個体識別」。鳥や昆虫などが紫外線を見ていることは1970年代まで知られていませんでした。90%以上の鳥が雌雄で紫外線反射が異なると報告されています。紫外線反射は羽毛のナノ構造で決まり、雄の健康状態の指標となっており、雌は明るい紫外線反射を示す雄に惹かれるというのです。ハシブトガラスは紫外色の模様の違いで互いに個体識別をしていることが分かっています。私の経験でも、太陽の当たり具合で、ハシブトガラスが青色や紫色を帯びて見えることがよくあります。

知的好奇心を掻き立てられる一冊です。