榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

大局的・歴史的な観点から『三国志』の理解を深めるのに最適な一冊・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1725)】

【amazon 『僕たちの好きな三国志』 カスタマーレビュー 2020年1月5日】 情熱的読書人間のないしょ話(1725)

今日(1月5日)、東京の都心で初雪が観測されたそうですね。因みに、本日の歩数は10,733でした。

閑話休題、『僕たちの好きな三国志――新解釈でよみがえる「登場人物95人」と「19の時代」』(青山誠他著、宝島社・別冊宝島セレクション)は、大局的かつ歴史的な観点から『三国志』の理解を深めようとするとき、最適な一冊です。

本書で再現される『三国志』の世界は、後代の長篇小説『三国志演義』ではなく、正史『三国志』を基礎としています。

『三国志』に登場する人物の中で、私が注目するのは曹操と司馬懿です。

曹操は「治世の能臣、乱世の姦雄、こう評された男は軍事、政治、文化など多方面に影響を与えた万能の巨人であった」。軍事面では『孫子』を現在に残る形でまとめ、政治面では屯田制を創始し、文化面では詩の地位を高めました。さらに、宗教面でも大きな影響を及ぼしたのです。「曹操陣営は、当初から道教寄りの姿勢をとっていた。・・・魏では道教が半ば国教化する。三国最大の国家が道教寄りになったことで、この宗教は一気に中国全土へと普及していくのである」。

「もし、この(曹操と2人の息子・曹丕、曹植による)詩文の革命がなかったとしたら、のちの唐の大詩人、杜甫や李白の詩も生まれなかっただろう。曹操の偉大さは、単に軍人や政治家としての能力だけにあるのではなく、文学の世界でこそもっとも発揮されているともいえるのである」。

曹操を支えた人材として、荀彧、夏侯惇、張繍、程昱、郭嘉、許褚、夏侯淵、曹仁、于禁、張郃、曹真が取り上げられています。

絶世の美女・甄姫は、こう紹介されています。「曹操と曹丕が争った絶世の美女には、袁家と曹家に関する重大な秘密が隠されていた――袁紹の次男袁煕に嫁いだ絶世の美女。その美しさは河北や中原じゅうに響き渡り、曹操は早くから彼女に目をつけていたという。袁家陣営が敗れ、その本拠地である鄴が陥落すると、曹操は取り残された彼女を手にすべく、その屋敷へと突入する。しかし、曹操を出し抜いて彼女をゲットしていた不届き者がいた。曹操の嫡男、曹丕である。・・・その後、甄姫は曹丕の息子として(後に帝位に就く)曹叡を産み、曹丕が魏の帝位に就くとともに皇后となった。しかし、わずかその7カ月後に、曹丕から自殺を強いられることになる。・・・彼女は曹家最大の秘密を握っていた。・・・曹叡は曹丕の子ではなく、袁煕の子であったという可能性が生じるのである。少なくとも、その疑いがかけられたのは間違いないだろう。そのため曹丕は、帝位に就くと同時に彼女の口封じをし」たというのです。

劉備は「道徳心に溢れたイメージが先行する人物だが、実はむしろ利に聡く機を見るに敏であった――まさに乱世にふさわしい野心に満ちた風雲児」。

孫権は「兄(孫策)のような華々しさこそないが、着実に領土を広げた名君。強大な勢力・呉を築き上げ、50年にもわたり君臨した事実上の呉の始祖」。

諸葛亮は「荊州、益州を奪取するという指針を与え、蜀が三国の一角として存立しえた理由のすべてを握る不世出の大政治家」。

魏の実権を握った司馬懿は「三国志の勝者となった、諸葛亮のライバル。晋における事実上の建国者として『宣帝』と諡された」。

面白おかしく脚色された『三国志演義』よりも、歴史上の人物の実像に触れることのできる正史『三国志』のほうが好きな私は、変わり者でしょうか。