榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

新たに発見された1本の余剰染色体が、鳴禽類の驚異的な多様性を生んだ可能性・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1761)】

【amazon 「日経サイエンス2020年3月号」 カスタマーレビュー 2020年2月9日】 情熱的読書人間のないしょ話(1761)

私は釣りをしないが、のんびりと時間が流れる感じの釣り堀を見るのは好きです。セグロセキレイ、シジュウカラの雄、カルガモ、ダイサギをカメラに収めました。2月の満月はスノームーンとも呼ばれるそうです。因みに、本日の歩数は10,274でした。

閑話休題、「日経サイエンス2020年3月号」(日経サイエンス社)に掲載されている「鳴き鳥の多様化の秘密」(K・ウォン著、編集部訳)には、驚くべきことが書かれています。

「鳥類種の半数は、特別な発声器によって鳴くことができる鳴禽(めいきん)だ。ムシクイやカナリア、ヒバリなど美しい歌声の鳥や、人間には耳障りな声で鳴くカラスの仲間を含む。・・・決定的な証拠がないなか、鳴禽類の多様化について複数の競合する説が提唱された。多様化を生んだ主因を気候変動だと考える説、プレートテクトニクスだとする説、交配相手選びを通じた性選択とみる説などだ」。

「そしていま、新発見がこの分野に興奮を巻き起こしている。すべての鳴禽は奇妙なことに、他の鳥にはない染色体を1本余分に持っているようなのだ。この発見は、ある生物の個体群の間に生殖障壁を生じる遺伝的仕組みの存在を示唆し、それが種分化を促進したと考えられる。この補助的なDNAについては未知の事柄が多く残っているものの、一部の科学者はすでに、鳴禽の進化の圧倒的な成功の秘密がここにあるのではないかと考えている」。

「彼らが調べた16種の鳴禽(鳴き鳥の系統樹全体にわたる種を選んだ)すべてがGRC(生殖系列制限染色体)を持っていたと報告した。一方、鳴禽以外の主要グループを代表する8種の鳥にはGRCがなかった。さらに、鳴禽類のGRCは種によってかなり異なり、近縁種でも違いが大きかった。これは、推定3500万年前に鳴禽類の共通祖先にGRCが初めて出現して以来、この染色体が鳴禽の系統ごとに急速に進化して違いを生んだことを示唆している」。

「GRCは生殖細胞だけに存在し、数のずっと多い体細胞にはないから、新たな形質が進化するための材料となる余剰DNAを鳴禽に提供する最も効率的な方法となった可能性がある。余剰分を含む大きなゲノムを体細胞に保持しておくにはエネルギーがかかるが、生殖細胞だけならこれを節約できるからだ」。

この説を研究者全員が受け容れているわけではないと付記されているが、十分な説得力ありと、私は考えています。