榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

哲学というのは、物事を疑い、批判的にいろいろな視点から見る学問だ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1906)】

【amazon 『社会を究める』 カスタマーレビュー 2020年7月3日】 情熱的読書人間のないしょ話(1906)

ヤブカンゾウ、アフリカハマユウ(インドハマユウ)、ノウゼンカズラが咲いています。

閑話休題、『社会を究める――スタディサプリ 三賢人の学問探究ノート(2)』(スタディサプリ「進路」編、若新雄純・水無田気流・小川仁志協力、ポプラ社)に収められている「哲学で社会は変わるのか?」(小川仁志協力)は、現代の哲学の役割について考察しています。高校生向きに書かれたものだが、大人にとっても役に立ちます。

「ドイツの哲学者マルティン・ハイデガーは、『死を意識すると懸命に生きられる』というようなことを言っています。このときの私は、まさにこの言葉の通り、これから懸命に生きようと思ったのです」。このときとは、京都大学を卒業後、入社した一流企業を辞めたはみたものの、司法試験に合格できず、無気力なフリーター生活を送った挙句、引き籠もりになり、体調を崩してしまった時を指しています。

「私は、図書館に入り浸るようになりました。自分の心の支えになってくれそうな本を探すことにしたのです。図書館では、宗教や心理学など、いろいろなジャンルの本を手当たり次第に読みあさりました。そうした中で、一番しっくりくる学問に出合います。それが哲学でした。何冊かの哲学の入門書に書かれていた『自分で考える』という言葉が、私の胸に響いたからです。私には、自分で社会を変えたいという思いがありました。何か自分以外の大いなる力に頼ろうとは思っていませんでした。哲学とは、物事を変えていくために、自分で考える学問だと知って、哲学に強く惹かれたのです。これが哲学との本格的な出合いでした」。

「私は、哲学者の本来の役割は、古い書物を読みとくだけでなく、人々が考えるための手助けをすることだと考えています。だからこそ、『哲学カフェ』を開いて、多くの人たちに考える機会を提供することは、私の研究においても、とても大切なことなのです」。

「日本という国は、『今のままでいいや』と思う傾向が強い国です。明らかに自分が不利益になるような問題でない限り、今はまだ明らかになっていなかったり、小さな問題だったりした場合は、見過ごしてしまいがちです。しかし、それが将来、みんなの生活をおびやかす大きな問題になることもあります。そんなとき、哲学的なものの見方が役に立ちます。哲学というのは、物事を疑い、批判的にいろいろな視点から見る学問です。・・・普段の生活で物事を疑うこともせず、ぼーっと生きていては、問題意識は生まれません。『今のままでいいや』ではなく、『本当に今のままでいいのか?』と疑って、批判的に物事を見てみましょう。社会のためにあなたががまんするのではなく、社会を変えるためにあなたの力を活かす方法を考えてみましょう。少し視点や考え方を変えるだけで、あなたが自分自身の手で変えなければいけない問題を見つけることができるはずです」。

哲学に目覚めるまで、私の好きな哲学者・小川仁志が波瀾万丈の人生を送ってきたことを、本書で初めて知りました。