榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

認知症と診断された82歳の父が、次から次へと巻き起こす騒動の数々・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1939)】

【amazon 『お父さんは認知症』 カスタマーレビュー 2020年8月5日】 情熱的読書人間のないしょ話(1939)

幸運にも、シオカラトンボの交尾を目撃することができました。シオカラトンボの雄(写真2、3)、雌(ムギワラトンボとも呼ばれる。写真4)、大シオカラトンボの雄(写真5)、雌(写真6)、コシアキトンボの雄(写真7)をカメラに収めました。ノコギリクワガタの雄の頭部以外は、野鳥に食われてしまったようです。ミソハギが薄紫色の花を咲かせています。ホオズキの実を包む萼が色づいてきました。

閑話休題、『お父さんは認知症――父と娘の事件簿』(田中亜紀子著、中公新書ラクレ)は、自分が、あるいは女房が認知症になったらどうしようと、あれこれ思い巡らしているうちに読み終えていました。

「2017年の初め、父は81歳。私はといえば、独身の子供もいないライターで、都内近郊の実家で父と同居中だ(母は十数年前に死去)。・・・父は、認知症の中で日本で4番目に多い『ピック病』という病を抱えているが、恥ずかしながら、この病名も、父が診断されるまで全く知らなかった。少々おかしなことはあっても、日常を送るにはそれほど不自由していなかったこともあり、病院に行くことを長年拒否し、父がようやく認知症の診断を受けたのが17年の夏。ピック病(症状はピック病7割、アルツハイマー3割)と判明したのはその12月、82歳の時だが、今思い出すと症状はかなり前からあった」。

運転免許証を絶対に手放そうとしない父、「気が付いたら、家は血の海、父の額は骨だった」、せん妄状態という意識障害の混乱と認知症の悪化で、娘や看護師に殴りかかる父・・・。これ以外にも、さまざまな騒動が巻き起こります。

「今は(自宅で)落ち着いているが、今後も父は思いもしない事件を起こすかもしれないし、症状もじわじわ進むだろうから油断は禁物だ。そもそも自分はまともだと思っているためで、一人でなんでもやろうとするので、どきりとすることはけっこうある。・・・また、父が一人で家にいる状態だと、私は外出するのが怖い。仕事を含む最小限の外出は常にダッシュ帰りで、仕事も社交も制限が続いているのがつらいところではある。とはいえ、こっちの身が持たないので、とりあえず、あまり先のことは考えない。本当は先を見越して入居施設も探さないといけないんだろうけれど、自分の生活も立て直さないといけないし、私自身、突然死ぬかもしれないし、まずは目先の日々をしのぎ、これ以上『事件簿』が増えないことを願いたいものだ」と結ばれています。

「現在も続くこの体験を通して思うことは、その時はまいってしまっても、やはりユーモアは大事で自分を助けること。そして、たとえ一人でも、介護保険や公の制度を工夫することで、日々を少しずつしのいでいけること。100%の解決は無理でも、改善はできるし、その改善を重ね、瞬間瞬間をしのいでいくことで、日々は成り立っていく。もし一人で悩んでいる方がいたら、いろんなケアマネさんや役所の窓口に聞いたり、ネットの情報などを調べたりしてほしい。日本は申請社会だが、けっこう助けになる制度はあり、使いようもいろいろ。一人で抱え、耐え忍ぶ必要はまったくない」という「あとがき」に至り、少しホッとしました。