榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

昆虫好きの私の知らないことが、まだまだたくさんあると知りました・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2030)】

【amazon 『昆虫のとんでもない世界』 カスタマーレビュー 2020年11月4日】 情熱的読書人間のないしょ話(2030)

あちこちで、キダチチョウセンアサガオ(エンジェルズトランペット。写真1~5)が花を咲かせています。シオン(写真6~8)の花を撮影していたら、その家の男性がカボス(写真9)の実をもぎって、女房に手渡してくれました。キノミセンリョウ(写真10)が実を付けています。我が家の庭では、マンリョウ(写真11)の実が色づき始め、ハナモモ(写真12)が紅葉しています。塀で日光浴をしているトノサマバッタの幼虫(写真13)は、何と、4日前に放してやった個体ではありませんか。

閑話休題、大型写真集『昆虫のとんでもない世界』(丸山宗利監修、平凡社・別冊太陽)の鮮明で迫力ある写真には圧倒されます。

「甲虫が大繁栄している最大の秘密は鞘翅と呼ばれるその前翅にある」。

「寄生は、ハチ類が編み出した高等戦術のひとつだ。昆虫の体内には、人間顔負けの高度な免疫システムが存在するため、本来なら体内に侵入した異物はたちまち排除されてしまう。それを寄生蜂たちは巧みにかわし、的確に寄主の命を刈り取る術を発達させてきた。ウイルスを使い寄主の免疫系をダウンさせたり、寄主の振る舞いを操作したり、また、後続で養分を奪いに来る他の寄生蜂とも戦わねばならない。彼女らは常に戦いの中にいる」。

「液体を食べる者たち――セミにアメンボ、アブラムシ、カメムシ、タガメにミアズカマキリ。みんなそれぞれちがうけど、最大の共通点はこのひとつ」。

「蟻牧――アブラムシはカメムシ目のアブラムシ上科に属する昆虫の総称です。種類によって寄主植物が異なる多様性に富んだ一群ですが、農業害虫としても重要なグループです。普段は植物上で集団となってあまり移動せず、維管束に針状の口を突き刺して汁(師管液)を吸って生活しています。アリに分泌物を与え、その見返りとして身を守ってもらう生態から、アリマキ(蟻牧)とも呼ばれています。単為生殖で増えたり真社会性をもつ種類がいることなどから、幅広い分野の研究対象にもなっています」。

「日本に6400種ほどが知られるチョウ目昆虫のうち、250種ほどがチョウ、残り全ての6000種以上はガと呼ばれる。鱗粉に覆われた翅がこのなかまの特徴であり、色・形の異なる鱗粉を組み合わせて配置することで、翅に多様な色彩や模様をもたらしている。・・・生息環境や生残戦略がまた多様であり、例えばオオカバマダラ、アサギマダラなど、ときに数千kmにも及ぶ渡り鳥のような長距離移動を実現したものがいる一方で、翅を退化させて飛翔能力を切り捨てることにより他者が生きられない過酷な環境へと適応したものも見られる」。

「吸い戻し行動――セセリチョウのなかまにとって、鳥の糞は貴重な餌源だ。そのままで吸い上げられない乾いた鳥の糞には、自らの排泄液、端的に言うところのおしっこを垂らし、鳥糞の成分が溶け出したその液体を再び吸い上げる。この行動を『吸い戻し』と呼ぶ。簡単には溶けないであろう乾ききった鳥の糞に向かって、排泄液の滴を垂らしては吸い上げる、というのを延々繰り返す様子は、なんとも健気に映る」。

「擬態とは、周囲の物や他の生物に自らの色・形などを似せる戦略のことをいう。例えば身近なバッタの仲間などは、周囲の草や地面に色・模様を似せた隠蔽擬態の使い手だ。背景に溶け込んで姿を隠し、捕食者には自らの存在を気付かせない。これと似て非なる擬態で、扮装擬態というものがある。コノハチョウに代表される扮装擬態の使い手は、枯れ葉など捕食者にとって食べる価値のない物体になりきってしまう。捕食者に自身の存在が気付かれたとしても、食べられるものとまで思い至らせない。コノハチョウの翅に描かれた葉の主脈は陰影を似せた模様で立体感が再現されており、最早トリックアートの域に達している。カマキリの仲間などは。捕食者から逃れるためだけでなく、自らが獲物を捕らえるためにも擬態を利用する。これを攻撃擬態あるいはペッカム型擬態と呼ぶ。ハナカマキリに至っては周囲に溶け込むどころか自身単体で花になりきり、ハチやチョウなどを惹きつけて捕食する。しかも姿を花に似せるだけでは飽き足らず、フェロモンに似せた化学物質を放出することで特定の種類のハチを呼ぶ化学擬態までやってのけるというのだから驚きだ」。

「ベイツ型擬態――虎の威を借る狐ということわざがあるが、この『狐』のようにふるまう昆虫もいる。強い毒針をもつスズメバチの仲間や、体内に毒性アルカロイドを蓄積するマダラチョウの仲間など、多くの捕食者からむしろ忌避される一部の昆虫になりきることで、その威を借るのがベイツ型擬態だ。東南アジアに生息するカバシタアゲハの擬態はそのモデルとなったチョウの種類を特定できるほど精巧にできているし、スカシバガの仲間は形や色・模様といった外見だけでなく羽音までハチに似せている」。

「成虫になったら、配偶者を探して、交尾をする。命をつなぐために生きている」。

写真と解説が見事に融合している一冊です。