40代の著者が車の運転免許を取りに遥々五島列島まで遠征した奮闘記・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2034)】
体長15cmほどのウシガエルの雄(写真1、2)に出会いました。ニシキギ(写真3)、モミジバフウ(写真4)が紅葉しています。イチョウ(写真5~7)、ユリノキ(写真8~13)が黄葉しています。因みに、本日の歩数は15,415でした。
閑話休題、エッセイ集『島へ免許を取りに行く』(星野博美著、集英社文庫)は、40代の著者が車の運転免許を取りに遥々五島列島まで遠征した奮闘記です。
「何かまったく新しいことに挑んで、余計なことをくよくよ考える暇もないほど疲れたい。脳も体も神経もくたくたにしたい。ちょうど子どもの頃、逆上がりや自転車が漕げるようになるまで、何週間も校庭開放に通い、必死で練習した時のように」。
「もちろん車の免許を取ったからといって人生はバラ色になるわけではない。しかし当時の自分には、朝起きて夜寝るためだけの、ほんの小さな手がかりでも必要だった。免許取ろうかな。その時初めて、具体的に思った。・・・あれからすでに四年がたち、体力も記憶力もみるみる衰えている。免許に挑むなら一刻も早いほうがいいだろう。免許を取るのだ! もう迷わなかった。私は多分、免許に救済を求めていたのだと思う」。
「私のイメージする心地よい教習所とは、学びたい人を選ばない寛容さを持っているところ。効率や利益より、味で勝負できるところ。ファストフードに対抗するスローフードのような、いわばスロースクール。たとえばそれは、お年寄りに優しい教習所。自分をその範疇に含めるのは若干抵抗を感じたけれど、思いきって検索条件を一つ加えた。『高齢者』。ぐっと件数が減った。その劇的な減り方は、何事も若者ばかりを優遇するお子様大国・日本を象徴しているようだった。その上位に『ごとう自動車学校』が登場した」。
「私はそれから、教習の合間に路線バスを乗り継いで島の北東にある堂崎天主堂へ行ったり、厩舎にいる犬のマリアを連れて大浜の集落を散歩したり、学校から歩いて四〇分くらいの香珠子ビーチへ行って日光浴をしたり、できるだけ外の空気を吸うように努めた。白髪とニキビに加えてシミまで増やしたくなかったが、日に日にシミも増えて行った。見方を変えれば、車からの逃避が甚だしくなりつつあった」。
紆余曲折はあったものの、「五月二五日、東京の鮫洲運転免許試験場で筆記試験を受けた。・・・多分当落線上ギリギリだったと想像するが、幸い一回で合格することができた」。
ここまで読んできて、私もホッと胸を撫で下ろしました。