榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

中世スカンジナビアの農民たち=バイキングは、なぜ大陸のトラブルメーカーになったのか・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2201)】

【読書クラブ 本好きですか? 2021年4月23日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2201)

アンスリウム・アンドレアナム(写真1)の薄桃色の仏炎苞、ブーゲンビレア(写真2)の赤紫色の苞が目を惹きます。デンドロビウムの園芸品種・ハルヒ(写真3)、アマリリス(写真4~8)、シャガ(写真9~11)、クルメツツジ(キリシマツツジ。写真12、13)が咲いています。

閑話休題、バイキングについて私の知っていることは僅かだが、『バイキング――世界をかき乱した海の覇者』(ヘザー・プリングル著、神田由布子訳、日経ナショナル ジオグラフィック社)のおかげで、最新情報に触れることができました。

「バイキングがどう戦い、どんな宴を開き、どこを襲撃し、どんなふうに滅んでいったのか。想像でならあれこれ語ることはできるだろう。だが、この大昔のスカンジナビア人について、私たちはいったいどれだけ本当のことを知っているだろう。彼らの世界観や実際の暮らしぶりは、どんなふうだったのだろう。衛星画像、DNA検査、同位体による年代鑑定など科学技術の発達のおかげで、今日、バイキングについての驚くべき新事実が出始めている。エストニアでは2隻の船が発掘され、詳しい調査が進んでいる。船には惨殺された戦士たちの遺骨が多数残され、暴力的なバイキングの起源や使っていた武器なども解明されつつある。スウェーデンではバイキングの女性指揮官の遺骨が調査されており、女性が戦闘に参加していたことが分かってきた。ロシアでは考古学者たちがバイキングの奴隷貿易の跡をたどっており、殻らの経済活動で奴隷売買が重要な役割を果たしていたことが明らかになってきた。これまで考えられていたよりもはるかに複雑で魅力的なバイキングの世界への扉が、今私たちの目の前で開き始めているのだ」。

「もろもろの新たな研究から浮かび上がるのは、勇敢な船乗りたちの野望と、文化に与えた影響だ。8世紀半ば、バイキングはスカンジナビア半島のバルト海から北海にかけての沿岸を皮切りに、富を求めて世界に乗り出し、300年にわたってヨーロッパ各地とアジアの一部を探検し、予想だにしない場所へ旅をした。流線形の優美な船に乗り、川や海に関する豊富な知識を頼りに、アフガニスタンからカナダまで37カ国以上を渡り歩いた、とスウェーデンのウプサラ大学の考古学者ニール・プライスは言う。旅の途上、50を超える文化に遭遇した彼らは、贅沢品を手に入れようと積極的に交易した。ユーラシアの長衣カフタンや色鮮やかな中国のシルクをまとい、黒海地方の光り輝く紅玉髄のビーズを身につけた。イングランドのヨークやウクライナのキエフに都市を築いて繁栄させ、イギリスやフランスの広大な地域を植民地化した。また、アイスランドやグリーンランド、北アメリカに前哨基地や入植地を作った。当時のヨーロッパの船乗りで、これほど遠くまで、これほど物怖じせずに冒険に出た者たちはない。『こんなことをしたのはスカンジナビア人だけ、バイキングだけです』とプライスは言う」。

「バイキングは探検と交易だけで富を手に入れたわけではない。イギリスやヨーロッパ大陸沿岸を残忍きわまりないやり方で襲撃してもいた。フランス北部ではセーヌなどの河川を行き来して攻撃を加え、略奪品で船を満たした。津々浦々で恐怖をまき散らし、西欧を支配するカロリング帝国の全経済の14%近くを、『和平をもたらす』と空約束してゆすり取った。海の向こうのイギリスでもバイキングの急襲は散発的に起き、やがてそれは戦争に発展した。バイキング軍はアングロサクソンの3王国を侵略、支配すると、遺体を戦場に放置して腐敗するにまかせた」。

中世スカンジナビアの農民たちが、なぜ大陸のトラブルメーカーになったのか――本書では、その過程が詳述されています。