本音とユーモアが練り込まれた短歌が満載の歌集・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2338)】
キンモクセイ(写真1、2)が咲き始め、芳香を放っています。ヒメウラナミジャノメ(写真3)、コジャノメ(写真4)、アサマイチモンジ(写真5)、ルリタテハの幼虫(写真6)、ガのセスジスズメの幼虫(写真7)をカメラに収めました。我が家のキッチンの曇りガラスにニホンヤモリの幼体(写真9、10)がやって来ました。因みに、本日の歩数は13,867でした。
閑話休題、『歌集 いらっしゃい』(山川藍著、角川文化振興財団)は、本音を隠さない短歌が満載です。
●なんだあのカップル十五分もおる「あーん」じゃないよ あとで真似しよ
●目を閉じてしまいあぶない階段でむずかしいこと言わんといてよ
●判読はほぼできないがとても良い人だとわかる連絡ノート
●じゅうぶんに生きた気もする雨の午後誰かの菓子を勝手に食べる
●紙づまり何度も起こすコピー機に生まれかわれと電源を切る
●太ってて暗いけれども本当のあなたは綺麗と言われ疲れた
●その人も仕事も辞めてしまおうと決めた日から手帳は白紙
●片づけたところに兄が置いていく手塚治虫を二十六冊
●恋人はいないしできたこともないことを説教されるなにこれ
●もう好きじゃないなと言えばじゃあ嫌いなのかと聞いてくる人滅べ
●焼酎で体が停止した旨にニンゲン停止と返信がくる
●しにたいと言う後輩につきあって二度とやらないバンジージャンプ
●細胞よ全部忘れろ入れ替われ短い爪で頭を洗う
●温泉で浸かるとほんと疲れるなもっと疲れてしぬほど寝よう
●つまらない人間ばかり集まっている会場でいちばんのデブ
●人生てやだねと言い交わしてそれが村橋さんの送別である
●懸命に文字のすき間を読む人に浅く見下されてあられ割る
●悲しみに胸いっぱいで読んでいるヒトの不幸が大好きだから
●十日間連勤前夜iPad miniで『ブッダ』を一気読みする
●人前で大声出してキレる人一〇〇パーセントおじいさんです
●五百円だった帽子を取り出して深くかぶれば全く一人
●非正規の人にも届くボーナスのお知らせだけでボーナスはない
●仕事いま三つしてると言えば皆「何を」も「なぜ」も聞かずに黙る
●十連勤明けようという夕方に最後の親知らずが痛み出す
●何かせねば何かせねばとつぎつぎとYahoo!知恵袋を開きゆく
●痩せたこと一度もないが痩せたさをライフワークにする安らかさ
●友達の結婚式へ行く前に<殺す>と書いたメモ紙捨てる
●湯をかけて待つ四分に憎しみは満ち満ちてゆく春の図書室
●取り出してながめて戻す憎しみと磨いて身につけるそれがある
●この家の前を人殺しが何度通っただろう 窓開けて寝る
●羽虫減りハエトリグモが五ミリほど大きくなっており秋の昼
●才能のない人はいてそれはもう生き方だろう近づかないで
●寝る前に嫌いな人の名前見て今日の見下し体操終わり
好きになった歌を抜き出していたら、こんなに多くなってしまいました。
この歌人は類い稀なユーモアの達人です。