榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

ハドリアヌス帝が、これほど多面的な人物だったとは・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2359)】

【読書クラブ 本好きですか? 2021年10月2日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2359)

これまで見たことのないチョウを撮影し、調べたところ、メスグロヒョウモンの雌(写真1~6)ではありませんか。飛び交う雌2匹のところに何度もやって来る茶色いチョウを、てっきりツマグロヒョウモンの雄だと思って撮影しなかったのだが、どうもメスグロヒョウモンの雄だったようです。雄も撮影したいので、明日、挑戦します。アオスジアゲハ(写真7)、キタテハ(写真8、9)、コミスジ(写真10)、ウラナミシジミ(写真11)、チャバネセセリ(写真12)、ナツアカネの雄(写真13)、雌(14、15)、アキアカネの雄(写真16)、雌(写真17、18)、アオマツムシの雄(写真19、20)をカメラに収めました。菌類に頼って生活する腐生植物のギンリョウソウ(写真21~23)が咲いています。因みに、本日の歩数は11,908でした。

閑話休題、『10人の皇帝たち――統治者からみるローマ帝国史』(バリー・ストラウス著、森夏樹訳、青土社)では、ローマ帝国の創建者で初代皇帝のアウグストゥスから、帝国第二の創建者コンスタンティヌスまで、10人の皇帝が取り上げられています。

「皇帝たちにとって、家族はなくてはならない存在だ。ローマ皇帝という役職が第一に、歴史上で最も成功した家業(ファミリー・ビジネス)だったし、それはまた最も矛盾した奇妙な家業でもあった。皇帝の一族は、権力を信頼できる状態にとどめ置こうとして、女性を含めた家族のメンバーを最大限に利用した。その結果として親、妻、娘、姉妹、そして愛人は、誰が見ても驚くほどの権力を享受した。しかし、その一族はまた往々にして不幸な家族ともなった。強制結婚はあたりまえだったし、内紛や殺人は四六時中起きた。さらに、家族の定義がゆるくてきわめて融通がきいた。皇帝の中には、皇位を父親から継承するのではなく、養子縁組で即位した者も多かった。内乱で権力を握った皇帝も少なくない。皇位継承がしばしば争われたという事実は、帝国にとって栄光であると同時に不幸の元凶だった。それは才能と暴力への扉を開くものであったからだ。このゆるい家族という基調を打ち出したのが、他ならぬ初代皇帝アウグストゥスだった」。

私にとって、とりわけ興味深いのは、アウグストゥスとコンスタンティヌスのほぼ中ほどの時代に登場するハドリアヌスです。「ハドリアヌスは自らを第二のアウグストゥスと呼び、帝国に平和をもたらした。部外者にエリートへの道を開放した点では他の誰よりも功績を挙げた。だが悲しいかな、ハドリアヌスもまた暴君で残虐だった。その点では、彼も他の皇帝たちと変わりがない」。

「ハドリアヌスは、ローマ皇帝の中で最も重要で、最も魅力的な皇帝だった。平和のためにこれ以上の努力をした者はいなかったし、帝国の拡大により強い反対の立場を取った者もいなかった。属州にこれほど個人的な注意を払った皇帝もいない。他の皇帝の中で、彼ほど古典の研究に熱心で、詩人や建築家としてもすぐれた者はいなかった。そしておまけに、彼は彫刻家でもあり画家でもあった。しかし、パラドックスという点では、ハドリアヌス帝に勝る皇帝はいなかった。ある古代の作家によれば、『ハドリアヌスは同じ人物でありながら、厳しいが気さくだし、威厳があってもよくはしゃぐ、遅れがちかと思えば行動は速く、ケチで寛大、欺瞞的で素直、残酷で慈悲深く、つねにすべてのことに気まぐれだった』という。彼はギリシアを愛したローマ人だったが、イタリアとブリタニアで最も記憶にとどめられている――そして、彼が文化を破壊しようとしたユダヤ人によっても、ユダヤ人の年代記は彼の記憶を呪っている。ハドリアヌスは女性よりも男性に好かれる男だったが、その成功は彼を愛した女性のおかげだった。だが、彼が思いを寄せたのは若い男の子だった」。

ハドリアヌスというのは、何とも多面的な人物だが、それぞれの側面を、本書によって詳細に知ることができます。